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2009年7月15日 (水)

兼六園の周辺の湧き水と鉄バクテリア(赤褐色代謝分泌物)による水質浄化、とは(2009.7.15)

 兼六園の中の名水金城霊沢とその水源が同じ金沢神社の手水舎の湧き水については、1878年(明治11年)、加賀藩の医学校教師、オランダ人のホルトルマンの分析により、これらの湧き水には少し鉄分を含むことが、水のいわれの立て札に説明されています。

 ところで、兼六園の周辺で、湧き水が見られる石垣のところどころが赤茶けています。なかでも寄観亭(きかんてい)横の道路側の石垣や排水溝の周辺一帯は、鉄管の赤さびを思わせる赤茶けた色で覆われています。これは湧き水の中に鉄分が多く、それをエネルギーとして生育する鉄バクテリアが異常に繁殖していることを示しています。

兼六園の湧き水と鉄バクテリア 現場の状態、下左 鉄バクテリアが繁殖している水中の赤茶けた物質の顕微鏡写真(1000倍)、 下右 鉄バクテリアが繁殖している湧き水を蒸発させた時に残留した物質のケイ光X線スペクトル、寄観亭下、金沢、石川)

(解説) 湧き水の中に鉄分が多いと、それをエネルギーとして生育する鉄バクテリアが繁殖します。鉄バクテリアは二価の鉄を三価の鉄に酸化する時に発生するわずかなエネルギーを使って生育し、井戸の中や地下の帯水層(たいすいそう)中でも繁殖し、水道管の中にもたまり、赤水となって出てくることもあると言われています。そこで、1994年(平成6年)11月に寄観亭の井戸と鉄バクテリアが異常に繁殖している石垣周辺の湧き水を採取し、それらの水の成分を調べたところ、それぞれ蒸発残留物(mg/l、ppm)100、135、鉄(mg/l、ppm)0~3、10~25、pH6.3、6.4、水温(℃)15.5、14.0でした。 ppmは百万分率で100万の中の1の割合にあたる非常に少ない量です。

 また、水酸化鉄と有機物が沈殿した鉄バクテリアの代謝分泌物(老廃物)の蓄積体と言われる赤茶けた物質には、ナトリウム、ケイ素、イオウ、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、鉄、銅、亜鉛、ストロンチウムなどの元素が検出されました。特に鉄バクテリアが繁殖している水中には鉄分が著しく多く、水中に共存する微量成分が水酸化鉄に取り込まれて共沈(きょうちん)している可能性があります。鉄バクテリアは、生成した水酸化鉄の沈殿を細胞内や細胞表面に沈殿するので、このバクテリアが繁殖している水は赤褐色となります。また、鉄の二価が存在する水中(pH1~7)には、5種ほどの鉄バクテリアが見出されています。

 このことから、鉄バクテリアは、湧き水中の多量の鉄分と共存する成分が周辺に流れて環境汚染を引き起こすのを防いで自然の水質浄化を行っている姿にも見えます。赤茶けた物質は、見た目に汚く見えるために掃除して取り除いても、兼六園の地質の砂岩中には鉄銹(てっしゅう)が多く見受けられ、兼六園周辺の湧き水には鉄分が多く含まれる原因となっているので、これからも鉄バクテリアによる自然界での水質浄化は続くものと思われます。 

(参考文献) 絈野義夫編著: 北陸の地質をめぐって(日曜の地学6)、菊地書館(1979); 須藤隆一編: 環境浄化のための微生物学、講談社サイエンティフィック(1983); 本浄高治: 兼六園の湧水と鉄バクテリア、金沢大学大学教育開放センター紀要、第7号、p.63-66(1987); 「兼六園」、北国出版社(1987); 株式会社橋本確文堂企画出版室編: 特別名勝兼六園ーその歴史と文化ー、本浄高治、兼六園と文化・水の文化ー兼六園の中の名水ー、橋本確文堂(1997). 

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