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2009年7月17日 (金)

加賀・能登(石川)の和紙、金箔打ちの雁皮紙(川北)、奉書紙(二俣)、行灯張りや壁掛けの仁行紙(輪島)、とは(2009.7.17)

  古来、日本和紙は、(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)の樹皮などを原料とし、伝統的紙漉き(かみすき)手法で作られた紙のことです。中国で発明され、飛鳥時代高句麗(こうくり、朝鮮)の曇徴(どんちょう)によって日本に伝えられた紙漉の手法は、江戸時代には、土佐(とさ、高知)、美濃(みの、岐阜)、越前(えちぜん、福井)、若狭(わかさ、福井)、駿河(するが、静岡)をはじめ全国に普及しました。

 各地特色ある多くの製品として、檀紙(だんし、楮、福井)、奉書(ほうしょ、楮、福井、石川)、土佐和紙・美濃紙(とさわし・みのし、楮、三椏、雁皮)、典具帖紙(てんぐじょうし、楮、岐阜)、杉原紙(すいばらし、楮、兵庫)、鳥の子紙(とりのこし、雁皮、福井)、札紙(さつし、楮、全国各地)、宿紙(しゅくし、漉き直しの中古和紙)などが作られています。

 加賀と能登(石川)に現存する和紙の産地は3ヶ所です。そこでは、雁皮から作られ、金沢の金箔(きんぱく)打ちに使われている雁皮紙(がんぴし、能美郡川北町中島)、楮から作られる奉書紙(ほうしょがみ、金沢市二股町)、杉皮や若竹などから作られる行灯(あんどん)張や壁掛用の仁行紙(にんぎょうし、輪島市三井町仁行)など、特色ある伝統的な和紙が見られます。

 本来の和紙作りは、楮、三椏、雁皮などの樹皮を木灰で煮て繊維を取りだし(蒸煮、漂白、除塵)、その繊維を叩いて細かくほぐし(叩解、こうかい)、トロロアオイ(アオイ科)の根の粘液(ねり)を加え、簡単な漉き具による手漉き、流し漉き(ながしすき)が有名です。また、古来、ねりを使わない溜漉き(ためすき)の手法もあります。

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二俣の紙漉き和紙(奉書紙、金沢) 加賀二股和紙(かがふたまたわし、全国手すき和紙連合会、石川県): http://www.tesukiwashi.jp/p/kagafutamata1.htm

(解説) 和紙主成分は、セルロース(ブドウ糖を単量体とする線状の縮合重合体)と呼ばれる天然の高分子化合物です。昔はカセイソーダを使わず、木灰で植物繊維を煮て取りだしていました。トロロアオイの根の粘液(ラムノースとガラクチュロン酸を主成分とする長い鎖状の複合多糖類)を利用した流漉きが我が国の独自の紙すき手法です。

 加賀雁皮紙は、江戸時代から能美郡那谷寺付近の丘陵地に自生する雁皮を原料として作られていました。金箔打ち紙は、まず雁皮紙を機械で打ち、わら灰の灰汁や渋柿(主成分はシブオール、フェノール性化合物)、卵白などの混合液に浸けて乾燥させます。さらに機械で打つ工程を繰り返し、表面を滑らかにして仕上げます。一万分の1mmと非常に薄く延びる金箔を扱うため、その表面を滑らかにする必要があります。

 二股の和紙作りは、奈良時代の719年(養老3年)の頃からで、医王山の周辺で自生する楮を原料とし、繊維が水中で均一になる冬の寒い時に行われていました。最初は写経や布教用に使われていたようです。1593年(文禄元年)、前田利家から加賀藩御料紙漉きの指定を受け、加賀奉書紙を作るようになりました。 

 能登の仁行紙は、能登半島で生まれた野趣溢れる紙で、山野の草花、クマザサ、杉皮、海草などを原料として漉き込んだ和紙です。 能登仁行和紙(You Tube): http://www.youtube.com/watch?v=MqyQOdMi5_Q

 明治になり、洋紙(原料、木材パルプ)の製造が導入されると、和紙は次第に衰退して行きました。今日の和紙の多くは、洋紙の影響を受け、その製法が近代化され、その特色が失われがちなので、昔の手法の良さが見直されてきています。

(参考文献) 平凡社小百科事典編集部編: 小百科事典、平凡社(1973); 町田誠之: 紙の科学、講談社(1981); 石川県高等学校野外調査研究会編: 加賀・能登の伝統産業、能登印刷出版部(1994); 石川化学教育研究会編: 科学風土記、加賀・能登のサイエンス、板垣英治、柿のしぶと金箔、雁皮紙、裳華房(1997).  

(参考資料) 全国手すき和紙連合会ホームページ: http://www.tesukiwashi.jp/index.htm

(追加説明) ○ 2014年(平成26年)11月26日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、日本政府が無形文化遺産に提案していた「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」について、登録決定しました。

 今回は「細川(ほそかわ)」{埼玉県小川町、東秩父村)と「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)を、既に登録済みの「石州半紙(せきしゅうはんし)」(島根県浜田市)と一括登録し直し「和紙」としました。

 これらは、いずれも原料にクワ科の落葉低木の(こうぞ)を用いるなど、8世紀以来の伝統工芸技術です。(北陸中日新聞: 和紙 無形文化遺産に ユネスコが登録決定、2014年(平成26年)11月27日(木)夕刊)

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