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2009年8月19日 (水)

仮名文字、いろは歌にまつわる歴史説話、無常(覚鍐、涅槃教)、鳥啼歌(坂本百次郎、明治、懸賞第1位)、高野切(伝 紀貫之筆、古今和歌集)、とは(2009.8.19)

   日本語を表音的に書き表す仮名文字として、万葉仮名(奈良時代)、平仮名、片仮名(平安初期)が、漢字より、我国に独自の音節文字として生まれました。 

 いろは(伊呂波)歌は、手習(てならい)歌の一つで、音の異なる仮名(かな)47文字、いろはにほへとちりぬるを わかよたれそつねならむ うゐのおくやまけふこえて あさきゆめみしゑひもせず、の歌からできています。末尾に、、また、京、を付けることがあります。

 平安末期以降、この歌は空海(弘法大師)作と信じられていましたが、その後の調査(い・ゐ、え・ゑ、お・を、同音の区別など)で、空海入定後の平安中期以降に作られたものと考えられています。 

 この歌は、色は匂へど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ 有為(うゐ)の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず、という意味の七五音四句、今様(いまよう)の和讃形式の歌謡となっています。

 新義真言宗の祖である覚鍐(かくばん)、1095年(嘉保2年)~1144年(天養元年)は、密厳諸秘釈(みつごんしょひしゃく)の中で、いろは歌を、もとは涅槃教(ねはんきょう)第13聖行品の世の無常偈(むじょうげ)、諸行無常(しょぎょうむじょう)、是生滅法(ぜしょうめっぽう)、生滅滅巳(しょうめつめつい)、寂滅為楽(じゃくめついらく)、の意味であると説明しています。 覚鍐(ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%9A%E9%91%81

 ところで、いろは歌には1903年(明治36年)、万朝報という新聞で、新しいいろは歌について、全国に懸賞つきの募集があり、一位には、坂本百次郎の有名な鳥啼歌(とりなくうた)が選ばれ、戦前には、いろは歌と共によく使われたそうです。

 この歌については、1969年(昭和44年)4月より金沢大学に勤務してまもなく、木羽敏泰教授との歓談でいろいろ教えていただいたことがあり、朝靄(あさもや)につつまれた帆船の幻想的な風景が目に浮かぶようで、なつかしく思い出されます。

 とりなくこえすゆめさませ みよあけわたるひんがしを  そらいろはえておきつへに  ほふねむれゐぬもやのうち、 鳥啼く声す夢覚せ  見よ明け渡る東を  空色栄えて沖つ辺に 帆船群れ居(ゐ)ぬ靄の中

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紀貫之(ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%80%E8%B2%AB%E4%B9%8B

 仮名文字が流麗な美しさを発揮しはじめるのは、平安時代中期、古今和歌集(こきんわかしゅう)撰者紀貫之(きのつらゆき)、862年(貞観4年)~946年(天慶9年)が登場してからです。その真蹟は残っていませんが、伝 紀貫之筆と言われている、高野切(こうやぎれ、高野山に伝来の写本)古今和歌集、寸松庵色紙、桂本万葉集などがあります。

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(解説) 古今倭歌集 巻第九 羈旅哥(歌)(きりょのうた)  あまの(能)はら ふ(不)りさけ(介)みれば(盤) かす(須)(川)(奈)る み(美)(可)さのやまに(尓) いでしつ(徒)(支)(可)(无)  この(能)うた(多)はむか(可)しなか(可)まろを、ーーー   も(毛)ろこしに(尓)て(弖)つ(徒)き(支)をみてよみ(見)ける  あべのなか(可)まろ(呂)

 1053年(天喜元年)頃に書かれた 高野切古今和歌集では、平仮名文字は能筆家によって洗練され、芸術の域まで高められました。筆者は3人の寄合い書きで、その書風の違いによって、第1種から第3種に分けられています。第1種と第3種の筆者は特定されていませんが、第2種の筆者は源兼行と考えられています。高野切は,豊臣秀吉が連歌を好む木食応其(もくじきおうご、高野山)にその断簡(だんかん)を与えたこと(高野山文殊院伝来した、きれ)にちなんで名付けられたそうです。

(参考文献) 平凡社小百科事典編集部編: 小百科事典、平凡社(1973); 新村出編: 広辞苑(第4版)岩波書店(1991); 古谷稔解説: 日本名筆選1 高野切第一種 伝紀貫之筆、二玄社(1993); 永原慶二監修、石上英一ほか8名編: 岩波日本史事典、岩波書店(1999); 木本南邨: 弘法大師空海・人と書、朱鷺書房(2003).

(参考資料) ○ 高野切(こうやぎれ、解説): http://www.kanashodo.jp/kanashodo-files/kouyakire.html

○ いろは歌(ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%84%E3%82%8D%E3%81%AF%E6%AD%8C

(追加説明)○ 仮名(かな)という名の語源は、漢字を真名(まな)と呼ぶのに対する言葉、仮字(かりな)で、それが、かんな、かな、に変化したと言われています。平仮名(ひらがな)は、平易な、かな、とか、貴賤男女を問わず平均して用いられる、かな、の意味を持つと言われています。

 いろは歌末尾に、、を付けるのは、いろはかるた歌の最後の諺が、京の夢大阪の夢(江戸)、京に田舎あり(上方、京、大阪)など、となっているからです。  

○ 平安時代、紀貫之(きのつらゆき)が書いた土佐日記は、日本最初の仮名文字日記で、四国の土佐(高知)の国守(こくしゅ、今の県知事)であった紀貫之が、土佐の国から京都へ帰るまでの紀行文です。

 土佐から大阪までの海上の旅は順調に来ているのですが、大阪から京都までに20日近く要しています。当時の大阪周辺は低湿地帯が多く、葦(あし)がたくさん生えていて、その中に行く先の標識が立っていました。これが葦の背丈が高いためによく見えず、あちこち間違え、やっと淀川(よどがわ)を見つけて京都に帰ったようです。これは、大阪周辺に葦が生い茂っていたと同時に、淀川は水上交通路が迷うくらいに発達していた、と見るべきです。(樋口清之: 完本、梅干しと日本刀、日本人の知恵と独創の歴史、祥伝社(2000)より)

土佐日記(紀貫之): http://www.aozora.gr.jp/cards/000155/files/832_16016.html

○ 弘法大師講聖典(四国六番安楽寺、弘法大師講本部)、弘法大師御入定千百五十年御遠忌記念出版、1983年(昭和58年)10月21日(新版)、講員(こういん)のよるべ、涅槃経(ねはんきょう)、弘法大師訳(こうぼうだいしやく)によれば、

涅槃経 諸行(しょぎょう)は無常(むじょう)なり  是生滅(これしょうめつ)の法(ほう)なり 生滅(しょうめつ)を滅(めっ)し已(おわ)りて 寂滅(じゃくめつ)を楽(らく)と為(な)す

弘法大師訳 色(いろ)は匂(にお)へど散(ち)りぬるを 我(わ)が世誰(よたれ)ぞ常(つね)ならん 有為(うい)の奥山今日越(おくやまきょうこ)えて 浅(あさ)き夢見(ゆめみ)じ酔(え)いもせず

○ 方丈記(鴨長明、鎌倉時代) 序 ゆく河の流(なが)れは絶(た)えずして、しかも、もとの水にあらず。淀(よど)みに浮(う)かぶうたかたは、 かつ消(き)えかつ結(むす)びて、久(ひさ)しくとどまりたる例(ためし)なし。世中(よのなか)にある人と栖(すみか)と、またかくのごとし。

○ 平家物語(作者不詳、鎌倉時代) 冒頭 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし たけき者もついには滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ

○ 古今和歌集は、平安前期の歌集で、勅撰和歌集の最初、20巻、歌数約1100首である。905年(延喜5年)、醍醐天皇のを受けて紀友則、紀貫之、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)、壬生忠岑選者になって編纂しました。紀貫之作の仮名序紀淑望作真名(まな)があり、春、夏、秋、冬、賀、離別、羈旅(きりょ)、物名、恋など13種に分類されている。平明優雅な歌風古今調として後世和歌の範とされ、整然とした体裁は基準としてその後の勅撰集ににも踏襲された。(小百科事典、平凡社より)

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