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2009年12月21日 (月)

宮崎友禅斎(友禅染の祖)と京友禅(京都)、加賀友禅(金沢)、江戸友禅(東京)、とは(2009.12.21)

  友禅染(ゆうぜんぞめ)は、江戸中期(元禄期、1688~1704年)に京都の扇絵師、宮崎友禅斎(みやざきゆうぜんさい)が創始したと言われています。京都のものは京友禅、金沢のものは加賀友禅、東京のものは江戸友禅と呼ばれています。中世から近世にかけ、衣の主流は、織物から染物へと時代は移っています。

 宮崎友禅斎(生没年未詳)は、江戸前中期の扇、染物絵師です。知恩院(ちおんいん、浄土宗、京都)門前に住み、狩野派の影響が見られる画風の扇絵蛍の図などを描いていました。友禅齊は、扇絵師として名声を博し、元禄期以降は小袖模様を描きました。

 1692年(元禄5年)に小袖雛形本(こそでひながたぼん)、余情ひながた、を刊行、動植物、器物、風景など、絵画性を持つ図柄を模様染に取入れましたが、友禅染という技法の創始にどの程度関与したかは不明です。

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扇絵蛍の図、宮崎友禅齊、東京国立博物館所蔵、google画像)

 友禅齊は、謎の多い人物ですが、伝承によれば、能登(穴水、あなみず)生まれ、晩年に35年住み慣れた京都から金沢へ帰り、加賀6代藩主前田吉徳、1690年(元禄3年)~1745年(延享2年)の御用、紺屋頭取黒梅屋のもとで染め衣装の下絵を描いて余生を送り、1736年(元文3年)86才の生涯を終えたとも伝えられています。卯辰山の龍国寺(りゅうこくじ、曹洞宗、金沢)の境内の石碑に、京のこと また口へ出る 余寒かな、と刻まれています。

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友禅染上 京友禅、京都、 下 加賀友禅、金沢、google画像より)

  京友禅は、柔らかい色調を好み、多彩な色を使っていますが、配色に工夫が見られ、上品で華やかです。加賀友禅は多色を使っていますが、加賀五彩(臙脂(えんじ)、黄土(おうど)、古代紫、草緑、藍)、特に紅色や紫、緑などに深みがあり、優雅で艶やかです。

 絵柄は、図案調京友禅に対し、加賀友禅では、草、花、鳥等の絵画調の物が多く、自然描写を重んじる中から「虫喰い」等独自の装飾が生まれました。「ぼかし」も京友禅以上に多用される傾向にあります

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友禅染江戸友禅、東京、google画像)

 また、東京の江戸友禅は、江戸の町人文化を背景とし、渋く落ち着いた色合いの中にも、洒落感が漂う都会風が特徴とされています。

(解説) 加賀友禅は、下絵(したえ)には、もち米粉とぬかで作った糊(のり)で図案の線を描き、色挿し(いろさし)、伏せ糊地染など約26工程を経て染めます。下絵を付け、糊を置きあるいは絞りをして地色と文様を染分け、その後、縫箔や鹿の子絞りを入れて、その上に彩色絵を手書きで描く、優美で多彩な染色法です。華やかな配色とぼかしの技法に特色があります。

 下絵を書き始めるとき、染め上がりに影響しないように、ツユクサ科のオオボウシバナの青い花弁から水で抽出した青い色素が下絵に使われます。その絞り汁を和紙に染め込ませ、乾燥して青花紙を作り、この和紙より青い色素を水に溶かし出して、下絵描きに使っています。この色素は、青い花の色素(アントシアニンの類似体)で、ツユクサの学名より、コンメリニンと呼ばれています。

 色挿しとは、輪郭が完成した模様に筆や刷毛で染料を染め付けていく工程で、昔は日本画の顔料として使われる青黛(せいたい)や艶紅(ひかりべに、つやべに)などを柄の彩色に使用しています。また、天然由来の藍(あい)、紅花(べにばな)、蘇芳(すおう)、茜(あかね)、紫根(しこん)、刈安(かりやす)などの植物染料、臙脂虫(えんじむし)から得られるコチニールなどの動物染料を用いていました。現在では、1856年(安政3年)、イギリスの化学者 W.H.パーキンにより発見された赤紫色の合成染料(アゾ染料)、その後、開発された化学染料が使われています。

 有名な友禅流しは、水のきれいな川(鉄分の少ない適度な軟水)で布から糊や余分な染料を落とす水洗(水もと)です。金沢では、厳冬のころ行うこと(約3時間)が多く、犀川、浅野川の雪解け水にさらすこともあります。川の上に色とりどりの布が泳ぐさまは、観光の目玉にもなる美しさですが、現在は河川の汚れなどもあり、1968年(昭和43年)、良質で豊富な地下水を求め、金沢の郊外、専光寺浜の松林に加賀友禅染色団地を竣工し、人工の川を利用して染めた布を水洗しています。

 型染友禅(かたぞめゆうぜん)は、明治中期に広瀬治助(ひろせじすけ、京都)、1822年(文政5年)~1890年(明治23年)が考案したもので、型紙を用いて捺染(なっせん)します。また、堀川新三郎(ほりかわしんざぶろう)、1851年(嘉永4年)~1914年(大正3年)がモスリン友禅(写染法)を開発して安価なものが工夫されました。 縮緬(ちりめん、モスリン)、絽(ろ)、羽二重などに染めて振袖(ふりそで)、訪問着などにしますが、最近はウール(羅紗、らしゃ、羊毛)、化学繊維、合成繊維なども染められています。

 1978年(昭和53年)7月13日、石川県は、加賀友禅の伝統技術の保護育成のため、こうした伝統的な技術を有する技術者を主たる会員とする、加賀友禅技術保存会(専光寺町、金沢)を県指定の無形文化財として認定しました。

(参考文献) 小百科事典、平凡社(1973); 石川県の歴史研究会編(編集代表、奥村哲): 石川県の歴史散歩、山川出版社(1993)); 石川化学教育研究会編: 科学風土記、加賀・能登のサイエンス、太田永久、加賀友禅、友禅流し、宮崎友禅齊ー加賀友禅の生みの親ー、板垣英治、ツユクサと加賀友禅、裳華房(1997); 永原慶二監修: 日本史事典、岩波書店(1999).

(文献資料) 加賀友禅とは(金沢の伝統工芸、長町友禅館、石川): http://www.kagayuzen-club.co.jp/learn/history.html

京友禅(友禅齊と友禅染、美と技の都、京都): http://www.kougei.or.jp/crafts/kyoto/yuzen1.html

江戸時代の京友禅(京都、google画像)http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E4%BA%AC%E5%8F%8B%E7%A6%85%E3%80%80%E6%B1%9F%E6%88%B8%E6%99%82%E4%BB%A3&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi

京友禅(京都、google画像):http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E4%BA%AC%E5%8F%8B%E7%A6%85&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi

加賀友禅(金沢、google画像): http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E5%8A%A0%E8%B3%80%E5%8F%8B%E7%A6%85&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi

江戸友禅(東京、google画像): http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E6%B1%9F%E6%88%B8%E5%8F%8B%E7%A6%85&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi

(追加説明) ○ 友禅祭  1920年(大正9年)、龍国寺金沢市東山)で加賀友禅の始祖・宮崎友禅斎墓碑が見つかったのをきっかけに、毎年開催されています。

龍国寺(曹洞宗、金沢): http://www.kanazawa-kankoukyoukai.gr.jp/spot_search/spot.php?sp_no=551

 2014年(平成26年)度は、命日の5月17日(土)、70回目の「友禅祭」が龍国寺で開かれ、友禅作家や呉服業者ら約100人が出席し、友禅斎の墓参りをし、加賀友禅のさらなる発展を祈願しました。また、制作で使いふるした筆やはけなどを燃やす筆供養もありました。(2014年(平成26年)5月18日(日)、北陸中日新聞朝刊

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