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2009年12月23日 (水)

漆器(石川)にまつわる歴史技法、漆の採取、輪島塗、山中塗、金沢漆器、とは(2009.12.23)

  漆芸(しつげい)は、おもに木の素地(きじ)に漆(うるし)を塗り、装飾を施した工芸です。加賀藩(石川)の漆器(しっき)産地として、輪島(わじま)、山中(やまなか)、金沢(かなざわ)があります。 輪島塗山中塗は、庶民の日常生活の必要から生まれた漆工芸ですが、金沢漆器は、加賀藩主前田家の御用により生まれた贅沢な貴族工芸でした。

 漆器は、日本、中国、朝鮮、ビルマ、タイなどで発達し、日本では、縄文時代の末期に出現しています。製作工程は、漆の精製、素地(木、竹、紙、麻布、皮、陶磁器、金属など)の加工に始まり、下地、上塗、加飾など複雑です。加飾技法には、蒔絵(まきえ)、漆絵など絵画的方法、沈金(ちんきん)、彫漆、鎌倉彫などの彫刻的方法などがあります。

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漆の採取(漆掻き、輪島、能登、石川、google画像)

 漆(うるし)の樹木は、中国、朝鮮を経由して日本に移植され、漆の採取や塗り加工の技術も伝わったと言われています。は、ウルシの樹皮に傷をつけ、漆液溝から外に滲み出す黄白色乳状液で、そのままのものは生漆です。

 漆液の中の主成分はウルシオール(OH基を2個含むカテコールの混合物)であり、漆が迅速乾燥してかたい膜をつくるのは、ラッカーゼ(銅(Ⅰ価)を含む酸化酵素)の酵素反応によるもので、水分を除去する一般の乾燥と異なり、湿度の高い(70~90%)乾燥室(漆風呂、室、むろ25~30℃)に放置すると硬くなります。ウルシオールは、皮膚のタンパク質と反応してかぶれ(アレルギー反応)を起こしますが、身体(サラダ油など)を塗っておけば、漆かぶれを防ぐことができます。

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輪島塗 朱塗懸盤、しゅぬりかけばん、わん、1828年(文政11年)、輪島市所蔵、  老松沈金四段重、おいまつちんきんよんだんじゅう、 1848年(嘉永元年)、石屋清九郎作、輪島市所蔵、輪島、能登、石川、google画像)  

 輪島塗(わじまぬり)は、輪島(奥能登、石川)で生まれた漆器で、室町中期(応永年間、1394~1428年)に紀州(和歌山)の根来(ねごろ)から伝授されたと言われています。 アテ(ヒノキアスナロ)、ケヤキ、ホウなどを木地(きじ)として、下塗りに地の粉(じのこ、珪藻土、けいそうど、小峰山、杉平町特産、輪島市内)を用い、また100回に近い複雑な工程を経るため、堅牢をもって聞こえ、装飾には主に沈金が施されます。輪島塗は、木地師、下地塗師、中塗師、研師、上塗師、蒔絵師、沈金師、呂色師など、多くの職人、作家の問屋制家内工業による総合漆工芸となっています。

  根来塗(ねごろぬり、和歌山)は、黒漆で下塗りした上に朱漆を塗ったものが多いです。(根来塗: http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/ren/web/ren7/negoro.html

 黒漆には、生漆を天日(真夏、気温30℃以上が最適)で加熱しながら手作業で掻き混ぜ(3~4時間)、水分と不純物を除去し、主成分のウルシオール酸化させてく精製した高級な天日黒目(てんぴくろめ)、また、砂鉄、鉄粉、水酸化鉄などを混ぜ、ウルシオール鉄分による酸化鉄(Ⅱ価)との錯化合物の生成によりく精製した天目黒目の代用品もあります。赤漆には朱色辰砂(しんしゃ、硫化水銀)が顔料として含まれています 

 京保年間(1716~1736年)、日常雑器の加飾から始めた金箔を用いた沈金技法を開発、末期から明治初年に金沢、京都の蒔絵技法を導入するなど、高度な漆芸技法を大成し、高級漆器として全国に名声を博するようになりました。

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山中塗(正尺四寸欅盛器、しょうしゃくよんすんけやきもりぎ、初代向出二郎作、山中漆器伝統産業会館所蔵、山中、大聖寺、石川、google画像)

 山中塗(やまなかぬり)では、大聖寺川の渓流を16kmほど遡った真砂(まさご)(山中、江沼、大聖寺、石川)で、中世末に越前から木地屋(きじや、椀や盆などの木器を作る職人)の集団が移住したと言う。、麦や稗を作りながら、自家用の食器を轆轤(ろくろ)で(ひ)いて作り、元禄年間(1688~1704年)、山中温泉の湯治客の土産物として売られたのが始まりと言われています。ケヤキを素地とした、色彩の明るい、現代風のデザインで値段も安く、大衆向きの漆器です。

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金沢漆器(蒔絵螺鈿秋月野景図硯箱、まきえらでんしゅうげつやけいすずりばこ、江戸 17世紀、伝 五十嵐道甫作、石川県立美術館所蔵、金沢、石川、google画像)

 金沢漆器(かなざわしっき)では、藩政時代、金沢の漆の工人は、蒔絵師、塗師、鞘師(さやし)、靭師(うつぼし)の四つに分かれていました。加賀3代藩主前田利常、1594年(文禄2年)~1658年(万治元年)の頃、蒔絵師として五十嵐道甫(いがらしどうほ)、?~1678年(延宝6年)が金沢に京風の蒔絵を伝え、塗師は茶道具の棗(なつめ)や飾棚(かざりだな)、贅沢な椀、盆、硯箱、手筥(てばこ)、卓などのみ塗り、鞘師は刀の鞘だけ塗り、鞘師は矢を入れる皮製の道具、靫に漆加工していました。(漆工芸京漆器の歴史と特徴: http://www.kyo-shikki.jp/history/index.html

 輪島塗保存団体(輪島塗技保存会、輪島市水守町四十刈11、石川県輪島漆芸美術館内)は、1977年(昭和52年)4月25日、国指定の重要無形文化財として認定されました。

(参考文献) 小百科事典、平凡社(1973); 日吉芳朗、本浄高治、中西孝: 化学風土記、わが街の化学史跡、加賀藩にゆかりのある史跡と産物(輪島塗)、化学と教育、日本化学会(1991); 石川県の歴史研究会編(編集代表、奥村哲): 石川県の歴史散歩、山川出版社(1993)); 石川化学教育研究会編: 科学風土記、加賀・能登のサイエンス、太田永久、加賀藩の漆器、輪島塗、山中塗、加賀蒔絵(金沢蒔絵)、日吉南賀子、輪島塗と山中漆器、裳華房(1997); 永原慶二監修: 日本史事典、岩波書店(1999).

(文献資料) 漆の採取(輪島、能登、石川、google画像): http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E6%BC%86%E3%80%80%E6%8E%A1%E5%8F%96%20%20%E8%BC%AA%E5%B3%B6&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi

石川県輪島漆芸美術館: http://www.city.wajima.ishikawa.jp/art/

輪島漆器(石川新情報書府): http://shofu.pref.ishikawa.jp/shofu/wajima/main.html

山中漆器(石川新情報書府): http://shofu.pref.ishikawa.jp/shofu/yamanaka/

金沢漆器(石川新情報書府):http://shofu.pref.ishikawa.jp/shofu/kougei1/sikki/what/index.html

漆工芸(日本の漆塗りの特徴): http://urushi-kogei.org/characteristics.html

漆の歴史(まる又漆器店、長野): http://www.marumata-japan.com/urushinorekishi.htm

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コメント

質問
 加賀蒔絵と輪島塗蒔絵との違いや工程の違いを教えて頂ければ幸いです。

回答
 小松原 正 様

 ご質問の件、加賀蒔絵の金沢漆器は、貴族工芸で、加賀3代藩主前田利常が細工所に京都や江戸から招いた蒔絵師によって始められました。格調高い精緻な蒔絵を引き継ぎ、前田家の庇護と奨励によって発展しました。

 一方、輪島塗漆器は、庶民工芸で、室町中期、応永年間(1394~1426年)に紀州(和歌山)の根来寺の僧から伝授されたと言われています。特に、宝暦年間(1751~1764年)、輪島塗の下地に輪島特産の地の粉(ケイ藻土の一種)を漆と混ぜ合わせて、数回塗り重ねる手法が開発され、堅地の朱家具として全国的に広く知られるようになりました。のち、江戸末期から明治にかけ、金沢や京都から高度な蒔絵の技術も導入され、漆芸のあらゆる高度な技法も継承されています。

 これら製作工程の違いは、以下の石川新情報府のホームページにも詳細な解説がなされています。ぜひ、それらの文献をご一読して下さい。

〇 金沢漆器(石川新情報書府):http://shofu.pref.ishikawa.jp/shofu/kougei1/
sikki/what/index.html
〇 輪島漆器(石川新情報書府): http://shofu.pref.ishikawa.jp/shofu/
wajima/main.html

 なお、漆器の製作工程は、漆の精製、素地(木、竹、紙、麻布、皮、陶磁器、金属など)の加工に始まり、下地、上塗、加飾など複雑です。また、加飾技法には、蒔絵(まきえ)、漆絵など絵画的方法、沈金(ちんきん)、彫漆、鎌倉彫などの彫刻的方法などがあります。

 蒔絵については、広辞苑によると、漆を塗った上に金銀粉または色粉などを蒔きつけて器物の面に絵模様を表す、日本の代表的漆工芸。奈良時代に始まり、その手法によって
平蒔絵、高蒔絵、研出蒔絵の三種に分かれ、また、地には平目地、梨子地、妖懸地、平鹿地などがある、と解説されています。          ご参考まで
                      本浄 高治                    

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