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2010年6月14日 (月)

雪は天から送られた手紙である、という言葉の生みの親、中谷宇吉郎(雪氷科学者、随筆家)、とは(2010.6.14)

  雪は天から送られた手紙である、という言葉は、中谷宇吉郎(なかやうきちろう、加賀市、石川)、1900年(明治33年)~1962年(昭和37年)が、色紙や書簡に好んで書いた文句です。

 最近、この文句を最初に記したのは、1941年(昭和16年)3月、親友で満州鉄道勤務の高野与作(1899~1981)に贈った掛け軸の可能性が高いことが、加賀市の中谷宇吉郎雪の科学館の調べで明らかにされました。(北陸中日新聞: 2012年(平成24年)2月11日(土)朝刊より)

 1932年(昭和7年)頃から雪の研究に没頭、十勝岳の麓で本格的に観測を行い、雪の結晶を撮影、1936年(昭和11年)、北海道大学の低温研究所で、兎(うさぎ)の腹毛を用いて、世界で初めて雪の結晶を人工的に作り出すことに成功しました。そして、雪の結晶の形と気象条件との関係を明らかにしました。

中谷宇吉郎(なかやうきちろう、雪は天から送られた手紙である、google画像)

(解説) 中谷宇吉郎は、雪氷科学者、随筆家、片山津(加賀市、石川)生まれ、東京帝国大学(理学部物理学科)で寺田寅彦、1878年(明治11年)~1935年(昭和10年)の指導を受け、北海道帝国大学に赴任後、雪の研究に没頭、十勝岳(標高2077m)の麓の山小屋(標高1060m、白銀荘、上富良野町)で3000枚に及ぶ雪の結晶をガラス乾板に撮影、複雑で多様な結晶が、どのような気象条件で生まれるのか、研究と実験を重ねました。

 1936年(昭和11年)、零下50℃の実験室で、世界で初めて人工雪の生成に成功しました。そして、雪の結晶の形と結晶が成長している場所の気温、結晶が成長している場所の氷に対する過飽和度の関係を表す、ナカヤ・ダイヤグラム中谷の図表)を作りました。また、アメリカのシカゴ(雪氷、凍土)、アラスカ(氷河)、グリーンランド(氷冠)など海外にも赴き、多くの功績を残しました。

 また、多くの随筆冬の華など)や書画を手がけ、科学映画(霜の花など)の先駆けでもありました。1938年(昭和13年)、出版された著書、(岩波文庫)、第三 北海道における雪の研究の話及び、第四 雪を作る話の最後に、以下(○)のような記述があります。

○ そんな事をしているうちに最初の年の冬は明けてしまったのであるが、その一冬の間毎日のように雪の降る度こうして撮った写真を集めて見るとかなりの蒐集(しゅうしゅう)が自然に出来上がった。それを見ると面白いことには、日本の雪の結晶は非常に種類が多く、今まで世界中で沢山の学者が五十年もかかって撮った結晶の各種類のうち殆ど大多数のものが、僅か一冬のこうした暢気(のんき)な観察で見付かったのであった。これは勿論(もちろん)わが国の気象状態が非常に複雑で変化の多いことからも諒解されるのである。

 それでその年の春には、測候所から冬中の天気図を借りて来て、今まで集めた雪の結晶とその天気図とを較べて、我国における雪の結晶と気象条件との関係、という論文を書いて、第一期の雪の研究はそれでお茶を濁して置くことにした。

○ このように見れば雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は結晶の形及び模様という暗号で書かれているのである。その暗号を読み解く仕事が則ち人工雪の研究であるということも出来るのである。

Photo_2
ナカヤ・ダイアグラム(中谷の図表、雪の結晶形と気温、氷に対する過飽和度の関係、google画像)

(解説) 1951年(昭和26年)、中谷の研究成果として、ナカヤ・ダイヤグラムが、アメリカ気象学会の刊行物で紹介されました。また、1954年(昭和29年)、Snow Crystals, natural and artificial(雪の結晶―天然雪と人工雪)がハーバード大学出版部から刊行され、中谷の名が世界に知られるようになりました。

 一般に、北海道の雪は、乾いて軽いサラサラの粉雪ですが、北陸の雪は、湿って重たいベタ雪です。この雪質の違いは、気象条件、特に、気流(シベリア寒気団など)、海流(リマン寒流、対馬暖流など)による、大気中の温度と水蒸気量(氷に対する過飽和度)の違いが大きな要因となっています。

(参考文献) 下中邦彦編: 小百科事典、平凡社(1973); 新村出編: 広辞苑(第四版)、岩波書店(1991); 石川化学教育会編: 科学風土記ー加賀・能登サイエンスー、p.189~191、西出隆、中谷宇吉郎、雪の結晶は天からの手紙、裳華房(1997); 朝日新聞編集部(植木裕光): ことばの旅人、北海道、中谷宇吉郎、雪は天から送られた手紙、be on Saturday、 朝日新聞、朝刊、2004年(平成16年); 中谷宇吉郎: 雪、岩波文庫(第8刷、2004).

(参考資料) 中谷宇吉郎雪の科学館(ホームページ、加賀市、石川): http://www.kagashi-ss.co.jp/yuki-mus/

中谷宇吉郎への旅(雪のパラダイス、北海道人): http://www.hokkaido-jin.jp/issue/sp/200202/special_01.html;

中谷ダイヤグラム(雪の結晶、google画像): http://www.google.co.jp/images?hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E4%B8%AD%E8%B0%B7%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0&um=1&ie=UTF-8&source=og&sa=N&tab=wi

雪国を分ける(北海道と北陸の雪の違い、富山市科学博物館):http://www.tsm.toyama.toyama.jp/public/nature/HTML/1997/97aki02.htm

大雪の記録(1927~2006年); http://www.alles.or.jp/~kazahana/weather/sub2data/ohyuki.html

(追加説明) ○ 北海道の雪について、中谷宇吉郎は、著書、雪(岩波文庫)、第二、雪の結晶雑話の中で次のように述べています。粉雪と一般に呼ばれているのは牡丹雪に対してサラサラした雪のことを指している場合が多いので、北海道では冬の初めと終わりにには牡丹雪も降るが 、真冬の間は、粉雪ばかりだなどという場合に使われる粉雪はこの意味である。この場合の粉雪とは牡丹雪に対する言葉であって、それは雪片の状態の名称と見るべきであろう。

○ 北陸の雪については、雪おこしがあり、冬になるとシベリア大陸から吹いてくる冷たい季節風(シベリア寒気団)と南方からの日本海沿岸を流れる温かい海流(対馬暖流)との温度差による激しい上昇気流により低空で(100mから数100m)豊富な水蒸気を含む雷雲が発生し、突然の稲光と落雷の後に平野部から山間部にかけての広い範囲に、水分の多い雪(ベタ雪)を降らせます。金沢で住むようになってから、冬場の雷は夏場と違って何の前触れもなく突然稲光と雷鳴をともなう激しいことに驚きました。

 気象の専門家は、これを一発雷と呼んでいます。冬季に雷が発生する地域では、大しけの日本海から静かな富山湾に逃げ込む小魚を追って鰤(ぶり)が回遊し、沿岸に張った定置網に鰤が獲れることから、北陸特有のこの冬の雷は、また鰤おこしとも呼ばれています。

 兼六園の冬の風物詩の雪吊りは、水分が多くて重たいベタ雪により、横に伸びた松の枝が折れるのを防ぐためのものです。

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