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2010年7月12日 (月)

加賀地方(石川)の銘酒(地酒、甘、辛)と名水(白山と医王山系の伏流水)、酒米の王様(山田錦)、とは(2010.7.12)

   加賀地方(石川)では、名水の水源として、白山(はくさん)のふもとを流れる手取川(てどりがわ)の白山水系の伏流水(ふくりゅうすい)、また、白山山地の最北端の山、医王山(いおうぜん)のふもとの小立野台地(こだつのだいち)の下を流れる医王山系の伏流水を、深い井戸から汲(く)み上げています。

 それと、酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)として、山田錦(やまだにしき、主に兵庫産のほか、福岡、岡山、德島産)、五百万石(ごひゃくまんごく、主に新潟産のほか、福井、富山、石川産)、美山錦(みやまにしき、主に長野と秋田産のほか、山形、福島産)など用いて、清酒の醸造が行われています。

 山田錦(やまだにしき)の酒造好適米としての証(あか)しは、心白(しんぱく、米の中心部にデンプンが粗(あら)く集まって白っぽく見え、食用米に比べて細胞組織に隙間(すきま)があり、麹(こうじ)かびが繁殖しやすいことです。

  日本酒の醸造法は、世界に稀(まれ)に見る独特のものであり、酒造好適米のデンプン(澱粉)の糖化(とうか)とエチルアルコール発酵(はっこう)を、麹かび(こうじかび)と清酒酵母(せいしゅこうぼ)により同時複合発酵により行い、約20%にも達する高濃度のアルコール飲料を生産しています。

 酒造好適米は、麹かびの糖化酵素(アミラーゼ)と酵母のアルコール発酵酵素が効果的に働くように発酵環境を整えています。すなわち、玄米の外側に多いタンパク質や脂肪が取り除かれ、また、米の中心部分の心白(しんぱく)は、デンプンが粗(あら)く集まって白っぽく見え、内部組織に隙間(すきま)があり、柔(やわ)らかくて内側に水分を保持でき、菌糸(きんし)が食い込んで行きやすく、デンプンの糖化発酵の時、麹かびの生育によい環境となっています。タンパク質は酒の旨(うま)味になりますが、多すぎると雑味の元になると言う。

 また、白山医王山の山地に降った雨や雪が地下深く浸(し)み込み、長い年月かけて砂礫層の中を伏流水として流れ下った水には、適度のミネラル(カルシウム、マグネシウムなど)が溶け込んでおり、発酵による清酒の醸造用水として適しています。

石川県の人気の高い地酒天狗舞、菊姫、手取川、白山市、石川)

 (解説) 石川の日本酒の銘柄では、白山の雪解け水の伏流水を使った、天狗舞(白山市)、菊姫(白山市)、手取川(白山市)、常きげん(加賀市)、また医王山の雪解け水の伏流水を使った、加賀鳶(金沢市)などが全国的にも人気が高いようです。これらの地酒は、酒造好適米として、主に山田錦、五百万石などを使っています。なお、一般に、新潟と富山の酒は辛口ですが、石川と福井の酒は、中程度の甘辛口とされています。

 日本酒醸造には、使用する水の水質と関わりが深く、日本酒甘辛(あまから)は、使用する水の硬度(カルシウム、マグネシウムの総量)と密接に関係しています。硬度が高いと、酵母の栄養源となり、発酵が促進され、お米の糖分をよく分解するので、辛口(男酒)になりやすく、硬度の低い軟水だと、酵母が栄養失調気味になり、発酵が緩慢(かんまん)になり、お米の糖分が残留して、甘口(女酒)になりやすいと言われています。(用語解説、各種イオン、硬度含む): http://unit.aist.go.jp/georesenv/gwrg/glossary.html.)

 軟水の場合には、どうしても発酵が穏(おだ)やかになり、他の雑菌が先に繁殖して腐ることが多かったので、昔は硬水の出る地域しか、安定してお酒がつくれませんでした。灘(兵庫)、伏見(京都)、西条(広島)は、硬水や中硬度水が出るので、昔から醸造地域として知られていました。中でも、西宮の宮水は硬度が高かったので男酒、伏見、西条は硬度がやや低かったので女酒、と言われました。

三浦仙三郎(軟水醸造法を開発、安芸津、広島、google画像)

 明治の終わり頃、広島の安芸津に三浦仙三郎(みうらせんざぶろう)、1847年(弘化4年)~1908年(明治41年)、という杜氏(とうじ)が現れ、苦労の末、軟水でも安定してお酒をつくる技術を開発して、秘伝とせず広めたので、日本全国の軟水地帯でも、鉄分が低ければ(0.02mg/l、ppm以下、ppmは百万分率)、安心してお酒がつくれるようになりました。鉄分は、麹(こうじ)の成分と反応して、フェリクリシンという赤ないし黄色の色素を生成するので、酒造には適さない成分です。

 吟醸酒(ぎんじょうしゅ)は、精米歩合60%以下(精白度40%以上)に精米し、低温でゆっくりと長期間をかけ醸造するため、軟水の方がさらりとして香りがよい酒ができると言われています。

(参考文献) 石川化学教育研究会編: 科学風土記、加賀・能登のサイエンス、p.56~57.板垣英治、加賀の銘酒と銘水、裳華房(1997); 木村克己: 日本酒の教科書、新星出版社(2010).

(参考資料) 石川県酒造組合連合会(ホームページ): http://www.ishikawa-sake.jp/

石川の日本酒(日本酒物語): http://www.sakeno.com/all_meigara_todou/19

日本酒甘辛地図(純米酒のある暮らし): http://www.junmai.info/what/amakara.html

日本一の酒米(山田錦、三木市、兵庫): http://www.city.miki.lg.jp/bunka/yamadanishiki.html; 酒造好適米(山田錦含む、各種):http://www5a.biglobe.ne.jp/~bugyosho/sake/kome.htm; 山田錦物語http://www.kikumasamune.co.jp/monogatari/;  

酒造好適米(心白米の発酵): http://www.kikumasamune.co.jp/koutekimai/index.html

三浦仙三郎(酒造家、安芸津、広島): http://www.tsukasyuzou.jp/hpgen/HPB/entries/1.html

(追加説明) ○ (さけ)はエチルアルコールを含む飲料の総称です。酒税法では、エチルアルコール1度(1%)以上を含む飲料を酒類といい、清酒、合成清酒、焼酎(しょうちゅう)味醂(みりん)、ビール、果実酒類、ウイスキー類、スピリッツ類、リキュール類、雑種の10酒類に分類されます。

 酒に含まれるアルコールは、糖類が酵母によって発酵するときに生成されます。果実酒のように初めから糖分を含んでいる果汁はそのまま発酵させるが、穀物を原料とする清酒、ビールなどの場合には、まず穀物の主成分たるデンプンを糖化する必要があり、そのため麹(こうじ)かびや麦芽(ばくが)の糖化酵素が利用されます。

 発酵したものをそのまま飲料する酒を醸造酒と言い、アルコールの度数も低く、原料特有の風味を持つのが特徴で、清酒、ブドウ酒、ビールなどが代表的です。発酵によって得た酒を蒸留、濃縮してアルコールの濃度を20度以上にしたものが蒸留酒で、焼酎、泡盛(あわもり)、ウイスキー、ブランデー、ウオッカなどがこれに属します。醸造酒や蒸留酒あるいはエチルアルコールを原料とし、それを混ぜたり香料などを添加したものを混成酒といい、味醂(みりん)、屠蘇(とそ)、五加皮酒、リキュール、合成清酒などがこれに属します。(下中邦彦編: 小百科事典。平凡社(1973)、より)

○ 甘酒(あまざけ)は、米こうじと米飯を混ぜ60℃ぐらいの温度を保てば10時間から1昼夜程度でできます。アルコール分はほとんど含まないのですが、さらに長時間放置しておくと発酵がさらに進み、エチルアルコール、酢酸(さくさん)などができて、すっぱく、辛くなっていきます。

 私の郷里(松島、のち上板、德島)の村の祭り(10月)で、自宅でつくった甘酒が次第にすっぱく、辛くなり、これを小学校(6年生)の理科の時間に、担任の先生(三宅先生)がリービッヒの冷却器を使った蒸留装置を用いて、甘酒の中からエチルアルコール(沸点78.3℃)を蒸留(じょうりゅう)し、その臭(にお)いをかいだ思い出があります。

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