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2010年7月 6日 (火)

白山(石川)のふもとに湧き出る名水、弘法池の水(釜清水)、白山霊水(白山比咩神社)、杉森地蔵水(杉森集落)と湧水の水質(ヘキサダイヤグラム)、とは(2010.7.6)

  石川県は全国的にみて、雨の多い地方ですが、降水の大部分は雪です。冬にシベリア方面から吹いてくる冷たい北風は、暖かい日本海の大量の水蒸気を白山を中心とした加賀山地に運び、山にぶち当て、大雪をもたらします。この雪はやがて清らかな水に変わり、郷土の豊かな自然を生み出す源(みなもと)となります。

 白山(石川)のふもとには、昔から言い伝えのある数多くの湧き水があります。1985年(昭和60年)、環境庁(のち環境省)による「名水百選」において、石川県からは、総持寺(曹洞宗)の裏山にある古和秀水(こわしゅうど、門前、鳳至)、赤蔵山の赤倉神社境内の湧水池である、御手洗池(みたらしいけ、田鶴浜、鹿島)と共に、白山から流れ出る手取川の中流にある、弘法池の水(こうぼういけのみず、鳥越、石川)が選ばれました。、

 そこで、白山のふもと、白山比咩神社(はくさんひめじんじゃ)境内の地下水脈から汲(く)みあげた水、延命長寿の白山霊水、また弘法池から山ひとつ越えた、阿手(あて)に行く途中の杉森(すぎのもり)集落の道路沿いに、裏山から湧き出している、地蔵さまの清水(杉森地蔵水とも)について、以下に紹介しました。これらの湧き水(白山の雪解け水!)は、おいしいと言うことで、多くの人々がポリ容器、ペットボトルなど持って訪れていますが、私も水汲みファンの一人です。

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弘法池(釜清水、鳥越、石川郡、石川県、2004年)

(解説) 弘法池の水は、白山の麓の手取川左岸黄門橋の西北にあり、深さ約2m、直径約30cmの岩穴の底から、1日に約30トンの清水が湧き出しています。あふれた湧き水は、すぐそばの用水に流れ込み、近くの手取川に流れ落ちています。

 その昔、空海(弘法大師)が鳥越村を訪れ、水を求めたところ、老婆が険しい谷道を下り、手取川の水をくんできて大師にさし出したところ、その姿にいたく感動した大師が、錫杖(しゃくじょう)を岩に突き刺したところ水が湧き出した、との言い伝えがあり、その名の由来となっています。全国的にも珍しい甌穴湧水(おうけつゆうすい)で、その形が釜に似ていることから、釜清水(かましみず)とも呼ばれています。 

 弘法池の地域は、手取川の河床(かっては、新第三紀の流紋岩質溶岩と岩脈とからなる河床)が隆起して出来たと言われています。弘法大師の像のすぐうしろに小さな池があり、この釜清水をポンプで汲み上げると、池の水面が下がることから、水脈はつながっていると思います。湧き水は、シャクまたはポンプで汲み上げ、飲料水として使われ、釜清水地区の住民が管理しています。

 水質(1996年)は、水温11.7℃、pH6.4、カルシウムイオン11.0ppm、マグネシウムイオン2.3ppm、ナトリウムイオン6.2ppm、カリウムイオン1.0ppm、重炭酸イオン33.1ppm、塩化物イオン7.7ppm、硫酸イオン10.4ppm、硝酸イオン6.7ppmなどの成分を含む名水でした。ppmは百万分率で100万の中の1の割合にあたる非常に少ない量です。(日本地下水学会編: 続名水を科学する、島野安雄、木村繁、石川県の名水水質、技報堂出版(1999).より)

 水の味がよいと言うことで、ポリ容器にいれて持ち帰る人を多く見かけました。長期間保存の場合は、ポリタンクの表面に黒いカビ状のもの(藍藻?)が生えてくるので、加熱して利用するとよいと思います。この黒い物質は、ブラシでこすっても取れないので、塩素系の漂白剤(ハイター、プリーチなど)で除去したことがあります。

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白山の麓の雪解け水、名水の湧き水、地下水、河川水の水質のヘキサダイヤグラム

(解説) 弘法池水質(2004年、ヘキサダイヤグラム解析図)は、近くの手取川や上流の手取ダムの流出河川水の水質(浅い地下水、河川水の水質に分類されるカルシウムイオンー重炭酸イオン型)とよく似ていて、つながりが深いと思いました。

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白山霊水(白山比咩神社境内、北門大鳥居入るすぐ左前で取水、三宮、白山市、石川県、  2004年、 2013年)

(解説) 白山比咩神社(はくさんひめじんじゃ)の大神、菊理媛尊(くくりひめのみこと)は水の神様であり、また結びの神様です。本来は、金沢平野一帯の里人たちの農耕の神様です。生命の源は水であり、結びは和合の力であり、このご神徳に大きな期待を抱くと言う。

 白山比咩神社の境内では、地下水(白山の雪解け水!)をポンプで汲み上げた水を、延命長寿の白山霊水として一般市民に提供しています。長期間保存の場合は、生水ですから加熱してご利用下さい、との注意書きが吊(つる)してあります。

 水質(2004年、ヘキサダイヤグラム解析図)は、弘法池の水(浅い地下水、河川水の水質に分類されるカルシウムイオンー重炭酸イオン型)とよく似ていました。

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地蔵さまの清水杉森地蔵水とも、杉森集落の道路沿い、鳥越、白山市、石川県、2004年)

(解説) 地蔵さまの清水は、白山のふもと、杉森(すぎのもり)集落の裏山から道路沿いに湧き出している水(白山の雪解け水!)で、その名は地蔵(不動)が祀(まつ)られていることに由来しています。水源は弘法池の裏山(岳峰、標高505.48m)の反対側にあり、岳峰のふもとから湧き出した水と思われます。湧き水は、絶えることなく、すぐ前の用水に流れ込んでいます。

 水質(1996年)は、水温14.7℃、pH6.8、カルシウムイオン3.1ppm、マグネシウムイオン1.3ppm、ナトリウムイオン5.0ppm、カリウムイオン0.4ppm、重炭酸イオン19.2ppm、塩化物イオン6.9ppm、硫酸イオン3.6ppm、硝酸イオン0.8ppmなどの成分を含み、弘法池の水よりもミネラル、重炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなど少ない名水でした。これは、地下水としての滞留(たいりゅう)時間が短いためと思います。(日本地下水学会編: 続名水を科学する、島野安雄、木村繁、石川県の名水水質、技報堂出版(1999).より)

 水質(2004年、ヘキサダイヤグラム解析図)は、淡水性の被圧地下水の水質に分類されるナトリウムイオンー重炭酸イオン型に似ていて、弘法池の水とは全く異なるものでした。 また、この水は、ペットボトル、ポリタンクなどに長期間保存しても、何の変化も見られませんでした。

○ 2008年(平成20年)6月環境省は、水環境保全の一層の推進を図ることを目的に、23年前の「名水百選」に加え、新たな名水として、「平成の名水百選」を選びました。

 石川県からは、白山美川伏流水群(白山市)、遣水観音霊水(やりみずかんのんれいすい、能美市)、桜生水(さくらしょうず、小松市)、藤瀬の水(七尾市)の4ヶ所が選ばれました。この選定は、7月の北海道洞爺湖(ほっかいどうとうやこ)サミットで環境問題が主要課題となるため、環境省が水の大切さを再認識してもらおうと、新たに選んだものです。環境省選定基準は、前回と同じ内容の評価で、水質にこだわらずに、清澄で、景観や保全活動がよければ、名水と判定したようです。

 水質については、厚生省(のち厚生労働省)の定めた、おいしい水の要件があります。それによりますと、水をおいしくする成分は、水に溶けているミネラル(カルシウムイオンとマグネシウムイオンの含有量など、硬度10~100ppm、ppmは百万分率で100万の中の1の割合)や重炭酸イオン(水に溶け込んでいる二酸化炭素、3~30ppm)など、一方、水の味を悪くする成分は、鉄分(0.002ppm以下がよい)、水の消毒に使った残留塩素(0.4ppm以下がよい)などです。また、pHは6.0~7.5、水温は、10~15℃’(体温より20~25℃低い温度)が適温でした。(用語解説、各種イオン、硬度含む: http://unit.aist.go.jp/georesenv/gwrg/glossary.html.)

 白山のふもとの湧き水は、白山の残雪が、夏にも冷たい水を送り出し、おいしさを引き立てていると思います。湧き水は、一年中絶えることがなく、温度は15℃前後、水量は降水に多少の影響を受け、大雨の後は勢いよく出ていました。

(参考文献) 絈野義夫編著: 北陸の地質をめぐって(日曜の地学6)、菊地書館(1979); 本浄高治: 名水をたずねて、自然人(1992); 石川化学教育研究会編: 科学風土記ー加賀・能登のサイエンス-、弘法池の水、裳華房(1997); 本浄高治: 科学風土記ー加賀・能登のサイエンス-、弘法池の水、金沢大学大学教育開放サンター紀要、p.73(1998); 日本地下水学会編: 続名水を科学する、石川県の名水水質、技報堂出版(1999); 蒲生優子: 名水に選ばれたおいしい水の水質と水源に関する研究(年末報告)、金沢大学理学部化学科分析化学研究室(2004).

(参考資料) 名水百選(昭和60年度、環境省、ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E6%B0%B4%E7%99%BE%E9%81%B8

平成の名水百選(平成20年、環境省、ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%88%90%E3%81%AE%E5%90%8D%E6%B0%B4%E7%99%BE%E9%81%B8

(追加説明) ○ 水質(1993年11月)は、弘法の池の水については、水温11.9℃、pH6.03、カルシウムイオン13.9ppm、マグネシウムイオン2.9ppm、ナトリウムイオン6.8ppm、カリウムイオン2.0ppm、重炭酸イオン?ppm、塩化物イオン7.8ppm、硫酸イオン11.2ppm、硝酸イオン2.8ppm、古和秀水については、水温11.9℃、pH6.26、カルシウムイオン5.5ppm、マグネシウムイオン3.3ppm、ナトリウムイオン13.3ppm、カリウムイオン2.0ppm、重炭酸イオン?ppm、塩化物イオン20.3ppm、硫酸イオン5.1ppm、硝酸イオン0.6ppm、御手洗池については、水温13.4℃、pH7.07、カルシウムイオン9.0ppm、マグネシウムイオン4.5ppm、ナトリウムイオン16.3ppm、カリウムイオン2.4ppm、重炭酸イオン?ppm、塩化物イオン10.7ppm、硫酸イオン0.1ppm、硝酸イオン~0ppmの成分を含む名水でした。(越川司郎、山下 尚: 石川県内における主な湧水の分布と水質、石川県教育センター紀要、第45号、石川の自然、第18集、化学編(3)、p.1~36(1994).より)

○ 空海(弘法大師)ゆかりの満濃池(溜池、満濃、香川)、弘法の水、とは(2009.6.11) http://kanazawa-sakurada.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-b794.html

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