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2010年10月 7日 (木)

秋の七草(万葉集)にまつわる歴史伝承、春の七草との違い、米国に帰化したクズ(葛)、とは(2010.10.7)

  奈良時代、秋の七草は、山上憶良(やまのうえのおくら、660~733)が、万葉集(巻8)で、「秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数(かぞ)ふれば 七草(ななくさ)の花」と詠み、これに続く、「萩(はぎ)の花 尾花(おばな) 葛花(くずばな) 撫子(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし) また藤袴(ぶじばかま) 朝顔(あさがお)の花」という歌が、昔から人々によく知られています。

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秋の七草(右上から  ヤマハギ、ススキ、クズ、 左上から カワラナデシコ、フジバカマ、オミナエシ、キキョウ、田中修著、雑草のはなし、口絵、p.22~23、秋の七草、中公新書(2007)、より)

(解説) ここで詠まれた萩はヤマハギ、雄花はススキ、なお、現代では、朝顔のかわりにキキョウをあてています。秋の七草は、川辺に多いクズ(マメ科)とフジバカマ(キク科)を除き、ハギ(マメ科)、ススキ(イネ科)、、ナデシコ(ナデシコ科)、オミナエシ(オミナエシ科)、キキョウ(キキョウ科)などの5種は、草原に生える植物です。秋の七草は、春の七草に比べ、影が薄く、実態としても各地から姿を消しつつあるという。それは、草原が土地開発そのもので失われたほか、近年は、放牧や草刈り(年4,5回は必要!)が減り、林へと植生遷移を起こしていることに起因しているという。(北陸中日新聞: 秋の七草影薄く、2010年(平成22年)9月27日(月)、朝刊、より)

 春の七草は、「芹(せり)、なずな、御形(ごぎょう)、はこべら、仏(ほとけ)の座、すずな、すずしろ、これや七草」と詠まれていますが、この呼び方は古語で、なずなはぺんぺん草、御形(ごぎょう)は母子草(ははこぐさ)、はこべらははこべ、仏の座はたびらこ、すずなはかぶ、すずしろはだいこんのことです。七草(ななくさ、七草の節句の略)は、これらを食用として、1月7日の朝、七草の入った粥(かゆ)を食べ、邪気を払い、長寿と幸福を祈りました。現代の生活では、芹(せり)、すずな、すずしろ以外の七草もそう簡単に手に入らなくなり、七草の行事もほとんど行われなくなっています。

 秋の七草は、見て楽しむものであり、これに伴う習俗も七種の花をいっしょに神にささげるというような行事は少なく、一つ一つの花が別々の神の祭祀(さいし)に関係をもっています。たとえば、ススキ(尾花)は月見の行事と関係しています。また、ナデシコ(撫子)はトコナツともいい、はやり正月といって、不幸の多い年は、夏にもう一度正月をする風習があり、その時この花を飾って祝うことがあったという。

○ ハギ(萩)は、マメ科の落葉低木の植物で、根には根粒菌(こんりゅうきん)が住み、空気中の窒素を取り込むので、痩(や)せた土地でもよく育ち、古くから日本各地に自生しています。ハギの仲間の植物には、ミヤギノハギ、シラハギ、マルバハギ、ヤマハギなどの種があり、秋に七草に出てくるヤマハギは、背丈が1~3mにも成長し、葉は1~2cmの卵形か楕円形で、3枚の小葉に分かれています。夏から秋に、チョウチョのような形の紅紫色の花を咲かせます。花は、朝に開き夕方に閉じます。

○ ススキ(尾花)は、イネ科の多年草の植物で、日本各地の草原、荒地、道端などに自生しています。茎の上部で、多数の枝に分かれます。枝には、すき間なく小穂が密生しています。秋には、背丈が1~2mにも育ち、穂をつけ、中秋の名月に月見だんごと並んだ姿は秋を象徴しています。風になびく穂が、けものの尾に見えることから、あきの七草では、尾花と言われています。昔は、ススキを刈って屋根を葺き、かやぶきの屋根にしたので、ススキのことをカヤと呼ぶこともあります。

○ クズ(葛)は、マメ科の多年草の植物で、日本各地に分布し、道端、草やぶ、川の土手など草や木がある日当たりのよいところなら、どこにでも生えます。葉の脇から伸びた花柄(かへい)に多数の花が房状につきます。花弁は濃赤紫色です。

 クズ(葛)の根は、直径10~20cmの塊根で、ここに多くの栄養が蓄えられていいます。 根にあるデンプンは、食用となり、葛湯(くずゆ)、葛餅、葛まんじゅう、葛切り、肉や魚のあんかけや吸い物に使われる葛粉です。葛粉の最高級品は、吉野(よしの、奈良)で産する吉野葛です。クズという名も、クズの産地、国栖(くず、吉野、奈良)の地名に由来すると言われています。宝達葛(ほうたつくず、能登、石川)の作業は、11月から4月にかけての冬期にあり、葛根の粉砕、冷水でのあく抜き、葛根汁の抽出、水さらし法(デンプン粒が不溶性であることを利用)によるデンプンの精製、乾燥などの操作があります。

 クズ(葛)は薬効にも優れていて、お腹(なか)をこわしたり、風邪を引いたときに、葛湯を飲むとよく効きます。根を煎じたものは、葛根湯(かっこんとう)として、風邪による発汗、解熱(げねつ)によく効く漢方薬として使われています。葛根湯のエキスは、痛みや炎症を抑える作用も知られています。

 クズ(葛)は、1876年(明治9年)、建国100年記念の博覧会に観賞用として、はじめて米国に持ち込まれ、飼料用や緑化用の植物として広がりました。また、その力強い繁殖力を利用し、堤防などの決壊を防ぐ土壌保全の植物として、米国に持ち込まれました。ところが、今では大繁茂して嫌われものの「帰化植物」となっています。米国では「Kudzu vine」と呼ばれています。vineはツルであり、さしずめクズカズラです。また、ハハコグサ(母子草、御形、春の七草の一つ!)、トキワカゼなども北米に帰化し、すでに野生化しているという。

○ ナデシコ(撫子)は、ナデシコ科の多年草の植物で、花期は7~10月、高さ30cm~1mで、山野の日当たりのいい草地や川原などに生えています。昔は川原にも自生していました。花は美しく、直径4~5cmの大きさで花びらは裂けています。草姿は可憐で、子のように撫(な)でたい草なので、カワラナデシコ(河原撫子)と呼ばれています。

○ オミナエシ(女郎花)は、オミナエシ科の多年草の植物で、花期は 8~10月、高さは50cm~1mで、日本各地に分布し、野山の草むらや土手に自生しています。山地や丘陵の日当たりのいい草原で見かけます。茎の上部で、枝分かれした先に小さな黄色い花が多数集まっています。葉は茎に対生し葉は羽状の切れ込みがあります。

 フジバカマ(藤袴)は、キク科の多年草の植物で、花期は8~9月、高さは40cm~1mで、奈良時代かそれ以前に、中国から香草として渡来してきた草です。葉を半乾きにすると、桜餅をつつむ桜の葉の香りがします。関東以西の本州、四国、九州に分布し、人里近くの川原の土手などに自生しています。太い根茎を持ち、洪水で他種が流される中でも自生地を確保してきました。茎は枝を分け、小さな花(頭花)を多数咲かせます。花をつけた柄がまとまり、傘形に見えます。護岸工事など河川開発で好条件を失い、環境省レッドデータブックで準絶滅危惧(きぐ)種に指定されています。

○ キキョウ(桔梗)は、キキョウ科の多年草の植物で、花期は7~9月、北海道、本州、四国、九州に分布し、山地や丘陵の草原に自生しています。青紫色の花は先が6裂した鐘形で、茎先に咲きます。葉は茎に互生しています。キキョウの根は、毒虫治療、胃腸薬、中耳炎の薬、痰切り剤などに使われています。園芸用採取や土地開発などで、絶滅危惧種に指定されています。

(参考文献) 樋口清之(監修): 生活歳時記、p.539、秋の七草、三宝出版(1994); 石川化学教育研究会編: 科学風土記、加賀・能登のサイエンス、板垣英治、p.150~151,宝達葛、裳華房(1997); 高橋勝雄(写真、解説): 野草の名前(夏、秋と冬)、山と渓谷社(2003); 田中修: 雑草のはなし、見つけ方、たのしみ方、中公新書(2007).

(参考資料) 秋の七草(画像検索、google画像): http://www.google.co.jp/images?hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E7%A7%8B%E3%81%AE%E4%B8%83%E8%8D%89&um=1&ie=UTF-8&source=univ&ei=0VusTOe0IIvBcYS42cgE&sa=X&oi=image_result_group&ct=title&resnum=6&ved=0CDkQsAQwBQ

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