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2012年2月13日 (月)

ジベレリン(植物ホルモン)、イネ馬鹿苗病菌の代謝物、種なしブドウの生産(ジベレリン処理)、コムギやイネの改良による増産(緑の革命、背丈が低く倒れにくい品種)、とは(2012.2.13)

   馬鹿苗病、イネが苗のころからひょろ長く伸びて、籾(もみ)が実らなくなる病気です。1926年(昭和元年)、日本占領下の台湾で、農事試験場に勤めていた黒沢栄一技師は、イネ馬鹿苗病が、化学物質によって発病することをつきとめました。それは、イネ馬鹿苗病菌(属名ギベレラ)の代謝産物で、植物の徒長(とちょう)を促す物質でした。

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藪田貞次郎(ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%AA%E7%94%B0%E8%B2%9E%E6%B2%BB%E9%83%8E

 黒沢技師と交流のあった東京帝国大学教授、藪田貞治郎(1888~1977)と、住木諭介(1901~1974)らは、1935年(昭和10年)、イネ馬鹿苗病を引き起こす化学物質名としてジベレリン提唱、1938年(昭和13年)、その物質を結晶として取り出すことに成功しました。ジベレリン(ギベレリンとも)は、伸長成長や発芽、開花を促す植物ホルモンの一種です。植物ホルモンとは(豆まめ知識、かわいい農業、h. taniguchi): http://www1.fctv.ne.jp/~tanr/study/horu.htm

馬鹿苗病(ばかなえびょう、香川県農業試験場病害虫防除所、香川、google画像) 水稲の病害虫病害虫写真館、香川県農業試験場病害虫防除所、香川):http://www.jppn.ne.jp/kagawa/syasin/inebyougaityuu.htmlジベレリンA3 の構造式

ジベレリンA3(ジベレリン酸)の構造式 (google画像) ジベレリン(植物ホルモン、写真でわかる園芸用語集、WorldPress): http://engei-dict.882u.net/archives/2523

(解説) 1958年(昭和33年)、ジベレリンは、菌ばかりでなく正常な植物も作っている植物ホルモンであることが判明、日英米が競争で、いろいろなジベレリンの化学構造を解明し、現在では、ジベレリンA1、A2、A3ほか、活性型と不活性型を合わせて約130種の異なるジベレリンが知られています。

 代表的な化合物はジベレリンA3(ジベレリン酸)で、特に茎の伸長作用が強く休眠の打破に関係し、果実の単為結実(たんいけつじつ、受精なしで子房だけ発達し、種子のない果実を生ずる現象)を誘導することがあり、1960年(昭和35年)頃、種なしブドウの生産に利用されています。

○ 種なしブドウ

(解説) 種なしブドウには、無核(むかく、種がない)品種のほか、ジベレリン処理により単為結果(たんいけっか)させたもの(受精しなくても果実ができること、普通は種なしとなる)があり、日本ではほとんどがジベレリン処理(ブドウの開花前と開花後の2回ジベレリン液に浸し、最初に胚(はい)の成長を止め、その後、果実を肥大させる)後者です。 種なしブドウ(果物ナビ、果物情報サイト、管理人: さき): http://www.kudamononavi.com/columns/view/8

 その他、シクラメンなど花類の開花を促進させるなどにも利用しています。 また、ジベレリンは、光発芽種子を暗発芽させ、長日植物の限界日長を短縮し、低温で春化処理を受ける植物の低温要求性を低下させる等の作用をもっています。生合成上は、カウレン系のジテルペンと考えられています。

○ 緑の革命

 ジベレリンで忘れてはならないのが、遺伝子変異のため、通常より小さくなる矮性(わいせい)の植物の存在です。江戸時代、1828年(文政11年)、「本草図譜(ほんそうずふ)」に小さなイネの絵(イネの矮性変異体)の記載があります。

 描かれた絵は、後に遺伝学の研究材料になった「大黒矮性(だいこくわいせい)」だとみられています。九州大学や農業生物資源研究所などのグループが、大黒矮性を調べたところ、ジベレリンの情報伝達などにかかわるたんぱく質の遺伝子に異常があり、植物体内のジベレリンが少ない状態となり、大きく成長できないと考えられました。

 背丈をほどほどに低くする半矮性(はんわいせい)という性質は、現在のコムギやイネの品種に広く取り込まれています。収量を上げるために肥料を与えると、以前の品種では大きくなりすぎて倒れやすくなります。 そこで、半矮性(はんわいせい)の倒れにくい品種を広めて、増収に結びつけました。また、イネの背丈が低く倒れにくいことは、収穫のときのコンバイン収穫機による刈り取りにも好都合であると思われます。

ノーマン・ポーローグ(1914~2009、米国、google画像) 

ノーマン・ボーローグ(1914~2009、農業学者、米国、ウィキペディア):http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0

(解説) コムギイネ半矮性(はんわいせい)、倒れにくい品種の性質こそが戦後、世界の食糧増産をもたらした「緑の革命」の最も重要な特性でした。そして、コムギの品種改良に力を尽くしたノーマン・ポーローグ(1914~2009)には、1970年(昭和45年)、ノーベル平和賞が贈られました。 緑の革命(EICネット、環境用語集): http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2516

 1980年(昭和55年)頃から、インゲンやカボチャを使い、理化学研究所では植物体内でジベレリンが合成される経路の研究を進めました。1990年(平成2年)代に、シロイヌナズナで遺伝子レベルの研究ができるようになり、1994年(平成6年)、ジベレリン合成にかかわる酵素の遺伝子を初めて発見しました。

 2000年(平成12年)前後になって、「緑の革命」で活躍した品種とジベレリンとの関係が解明されました。改良されたコムギでは、成長にブレーキをかけるタンパク質の遺伝子の変異で、ジベレリンが壊すはずのブレーキがかかったままでしたイネでは、ジベレリン合成酵素の遺伝子に起こった変異のため、つくられるジベレリンの活性が低くなっていました。イネで半矮性の原因遺伝子を明らかにした松岡信教授(名古屋大学)は、「コムギでもイネでも、ジベレリンの働きを抑えた品種が使われていた。その共通性が興味深い」と語っています。

ジベレリンと受容体の立体構造の模式図(リボンモデル表示、ジベレリン受容体のジベレリン(GA)結合ポケットの拡大図、活性型、大型放射光施設Spring8、兵庫、google画像) ジベレリンのX線構造解析(大型放射光施設Spring8,兵庫):http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2008/081127

(解説) 現在、ジベレリンの研究は、植物体内で情報がどのように伝わるのかに関心が向けられています。植物細胞でジベレリンと結合する受容体は長く謎でしたが、2005年(平成17年)名古屋大学や東京大学の研究で解明され、2008年(平成20年)には、ジベレリンと受容体が結合する様子が、X線構造解析によって初めて立体的にとらえられました。その結果、ジベレリンと結合した受容体は、ブレーキたんぱく質の働きを解除する役目も果たしていることが明らかにされました。

 また、ジベレリンの合成酵素の働きを妨げる薬剤は、ジベレリンの生産を抑え、植物の成長を抑える効果を発揮するので、穀物や花などを、倒れにくくしたり小さくしたりするのに使われています。今後のジベレリンの応用として、高バイオマス作物の育種(バイオエタノールの生産)、新しい植物成長調節剤の開発(植物の成長の制御)なども期待されています。 

 私は、中学生の頃、夏休みの課題研究として、農業指導員であった親父に教えてもらい、ごま葉枯れ病、縞葉病、いもち病、馬鹿苗病など、病状のイネの葉を採取し標本を作ったことがあり、今も強く印象に残っています。

(参考文献) 下中邦彦編: 小百科事典(初版)、平凡社(1973); 新村出編: 広辞苑(第4版)、岩波書店、1991); 大木道則、大沢利昭、田中元治、千原秀昭編: 化学事典、東京化学同人(1994); 朝日新聞: 植物ホルモン、ジベレリン、植物ホルモン「緑の革命」陰の主役、成長操り収穫高める(2011年(平成23年)1月25日(火)、朝刊より).

(追加説明) ○ ブドウ(葡萄)は、ブドウ科の落葉つる植物です。小アジアから中央アジア原産の欧州ブドウと北米原産のアメリカブドウとがあります。 ブドウの品種(100種以上、勝沼ねっと、山梨):http://katsunuma.net/budou/serch/index-name.htm. 

 ブドウの栽培の歴史は古く、今日では多くの品種に分化しています。日本に多い甲州ブドウ欧州系で露地(棚栽培)で作られ、同じくマスカット、オブ、アレキサンドリアは温室で栽培されます。アメリカ系のデラウェア、キャンベルスアーリーなどは露地栽培されます。果実は生食用のほかレーズン、ジャム、ゼリー、ジュース、ブドウ酒などに利用されています。ブドウ葡萄、ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A6

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コメント

私はひょうたんが趣味で栽培と加工で毎日楽しく過ごして居ります78歳の男性です。
ひょうたんは出来るだけ小さい物が好みで、中では千成瓢箪より一回り小さい一寸豆瓢(東南アジア系)
が一番小さいので私の好みです。私は一寸豆瓢を更にジベレリンを使って小さくする実験をして見たい。
その効果とジベレリン(濃度)・時期・その他・等 いろいろと教えて下さい。よろしくお願い致します。

ご返事お願い致します。

(回答)
  ご質問のジベレリンを使って一寸豆瓢(ウリ科)を更に小さくしたいとのことですが、この植物ホルモンは西瓜(ウリ科)、葡萄(ブドウ科)などの果実を大きくしたり、種なしにする働きがあり、小さくはできないと思われます。 ご参考まで

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