春の詩として、ロバート・ブラウニング(1812~1889、イギリス)、「Pippa Song」の英訳詩である上田敏(1874~1916)の「春の朝」、また、高校生の頃に学んだ漢詩として、孟浩然(もうこうぜん、689~740)の「春暁」(五言絶句)、春眠不暁覚、及び杜甫(とほ、712~770)の「春望」(五言律詩)、国破山河在など懐かしく、思いつくまま、改めて調べて見ました。
ロバートト・ブラウニング(1812~1889、ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0.
〇 Pippa Song 春の朝ーロバート・ブラウニング劇詩 「ピパが通る」(1841、天保12年)、 上田敏翻訳 「春の朝」(訳詩集、海潮音、1905、明治38年) 小さな資料室:http://www.geocities.jp/sybrma/05pippa.htm.
Pippa Song 春の朝
The year!s at the spring 時(とき)は春
And day's at the morn 日は朝(あした)
Morning's at seven 朝は七時
The hill-side's dew-pearl'd 片岡(かたおか)に露みちて
The lark's on the wing 揚雲雀(あげひばり)なのりいで
The snail's on the thorn 蝸牛(かたつむり)枝に這(は)ひ
God's in His heaven 神(かみ)そらに知ろしめす
All's right with the world すべて世は事(こと)も無し
ロバート・ブラウニングの代表作、劇詩「ピパが通る Pippa Passes」(1841年)の一節、「God's in his heaven. All's right with the world.」(神は天に在り、この世は総てよし)」が広く知られています。
この歌は、悪に入り込んだ人たちの心に清流を流す少女ピパの歌として劇詩に現れます。
春の朝(ロバート・ブラウン原作、上田敏、平井正穂ほか、訳詞): http://pistis.jp/textbox/tyosaku/ssc/01robart-a.html.
春の詩(古今東西・すてきな詩の世界へ):http://kokontouzai.la.coocan.jp/
孟浩然(もうこうぜん、689~740、ウィキペディア):http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%9F%E6%B5%A9%E7%84%B6.
〇 春眠暁を覚えずー孟浩然 「春暁」(しゅんぎょう、春の明け方、5言絶句、5言と起承転結の4句)
春眠不覚暁 春眠(しゅんみん) 暁(あかつき)を覚(おぼ)えず (春の夜のねむり いつ夜が明けたのか気づかない) 起
処処聴啼鳥 処処(しょしょ) 啼鳥(ていちょう)を聞(き)く (あちらこちらから 鳥の鳴き声が聞こえてくる) 承
夜来風雨声 夜来(やらい) 風雨(ふうう)の声(こえ) (昨夜は 風まじりの雨の音) 転
花落知多少 花落(はなお)つること 知(し)る 多少(たしょう)ぞ (花は いかほど散ったことか) 結
孟浩然は、役人になるための科挙(かきょ)の試験にも受からず、世間的には不遇な一生を送りました。が、同時代の有名な詩人(王維、李白、杜甫など)から、尊敬され慕われていました。
杜甫(とほ、712~770、ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%9C%E7%94%AB.
〇 国破れて山河在りー杜甫 「春望」(春の眺め、5言律詩、5言と8句)
国破山河在 国破(くにやぶ)れて 山河在(さんがあ)り (国は破れたけれども、山河は、もとのままに、傷つかずにある)
城春草木深 城春(しろはる)にして 草木深(そうもくふか)し (長安の町に春が来たけれども 草木だけが深々と茂っている)
感時花濺涙 時(とき)に感(かん)じては 花(はな)も涙(なみだ)を濺(そそ)ぎ (不幸な時節に感じて 花を見ても涙を流し)
恨別鳥驚心 別(わか)れを恨(うら)んでは 鳥(とり)も心(こころ)を驚(おどろ)かす (家族の離散に心痛んで 鳥の声にもおどおどす)
烽火連三月 烽火(ほうか) 三月(さんがつ)に連(つら)なり (戦局の急を告げるのろしの火も三月の間つづく)
家書抵万金 家書(かしょ) 万金(ばんきん)に抵(あた)る (家からの手紙は 途方もなく高い価値にあたる)
白頭掻更短 白頭(はくとう) 掻(か)けば 更(さら)に短(みじか)く (しらが頭は 髪の毛がうすくまだらになっている)
渾欲不勝簪 渾(すべ)て簪(しん)に勝(た)えざらんと欲(ほつ)す (すっかり髪がうすくなってヘアピンで冠をとめられなくなった)
杜甫は、戦乱の世を平和にもどす事業に参加するため、早く役人生活にもどりたい。しかし今は年老いて、それもかなわぬのか、と嘆いています。
(参考文献) 一海知義: 漢詩入門(第21刷)、岩波書店(2013).
(参考資料) 〇 室生犀星(金沢出身の作家)にまつわる歴史実話、ふるさとは(小景異情)、山のあなたの(カール・ブッセ、上田敏訳、海潮音)、桃源郷(陶淵明、宏村、中国)、とは(2009.7.6): http://kanazawa-sakurada.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/muro.html
〇 木羽敏泰

木羽敏泰先生(教員プロフィール): http://www.kanazawa-it.ac.jp/kyouinroku/m/kiba_toshiyasu.htm.

2013年(平成25年)11月1日、金沢大学名誉教授、木羽敏泰先生(理学部、化学教室、分析化学研究室)は、お元気で、めでたく、100歳を迎えられました。
百寿のお祝いのとき、次のような漢詩、送杜少府之任蜀川 王勃(おうぼつ、649~676、初唐)(五言律詩、五言と8句の中の5句、6句)の墨書をいただきました。
海内存知己 海内(かいだい)に 知己(ちき)を存(そん)すれば
天涯若比隣 天涯(てんがい)も 比隣(ひりん)の若(ごと)し
この句の意味は、「この世の中で、自分を理解してくれている友がいるかぎり、世界のはても、隣り近所のようなもの」とのことです。論語の「四海皆兄弟」の意をうたう、優れた対句として名高いものです。
送杜少府之任蜀川 王勃(詩詞世界、碇豊長):http://www5a.biglobe.ne.jp/~shici/pbt_shi00.htm.