おにぎり(御握り)、弥生時代に伝来した、ジャポニカ型(うるち米)のご飯を手で三角形、俵形、丸形、円盤形などに握って食べる、日本独自の食文化、日本各地の地方色豊かなおにぎり、とは(2014.11.22)
おにぎり(御握り)は、広辞苑には、婦人語のにぎりめし(握り飯)、おむすび(御結び)、とあります。これは、うるち米のご飯を手で握って冷めたまま食べる、日本独自の食文化、と言われています。
それは、弥生時代(約2000年前)、伝来したイネ(稲)が、コメ(米)に水を加えて加熱すると、適度な粘りを持ち、成形しやすく、冷めてもおいしい、ジャポニカ型(うるち米!)であったこと、また、平安時代、コメ(米)をふっくらと炊き上げる炊飯技法(はじめチョロチョロ、中パッパッ、赤子泣いても蓋とるな!)が、日本で独自に誕生したことに起因すると考えられています。
○ おにぎりの歴史
弥生時代、最古のおにぎりとして、チマキ状の炭化したコメ(米)が鹿西町(ろくせいまち、のち中能登町、石川県)の杉谷チャノバタケ遺跡で出土しています。このチマキ状炭化米塊は、神様へのお供えものや魔除け(まよけ)もの、と考えられています。
平安時代、貴族の宴(うたげ)では、待機しているお供、身分の低い人々に屯食(とんじき)、包飯(つつみいい)などがふるまわれました。これは、強飯(こわめし)を握りかためて細長い卵形にしたもので、味付けはなかったという。
戦国時代、ご飯を握るだけの手早さと、食べる際に箸も器もいらない手軽さは、戦いに向かう兵士の携行食(弁当!)として活用されました。
江戸時代、現在と同じような、銀シャリ(白米)と海苔(のり)で作ったおにぎりが普及し、江戸の町民の間で食べられるようになりました。喜田川守貞(1810~?)著、守貞謾稿(もりさだまんこう、近世風俗志)に、掌(てのひら)に塩水を付けて、これを握る、また、京坂は俵形に制し、表に黒胡麻(くろごま)を少し撒(ま)くものあり、とあります。
現代では、1978年(昭和53年)、はじめてコンビニ、セブンーイレブンがおにぎりを発売し、2013年(平成26年)には、年間で約150種、約19億個のおにぎりを販売しました。その中には、キャラ弁(キャラクターを盛り込んだおにぎり)、また、表情豊かなパンダおにぎりなどが登場しました。
〇 おにぎりと塩
ご飯は、手に塩をまぶして握るだけで、非常においしくなります。これは、ご飯のようなカリウムの多い食品に、ナトリウム、つまり塩を加えると、体のバランスがよくなる、とも考えられます。昔は今よりもっとカリウムの多い植物性の食品を多く食べ、汗を流してナトリウムを失っていたので、体がナトリウム不足に敏感であったためかも知れません。
○ おにぎりの形と具
おにぎりの形(三角、俵(たわら)、丸(ボール)、Google画像、日本経済新聞): https://www.nikkei.com/article/DGXLASHD10H3S_R11C14A1AA1P00/
(解説) おにぎりのカタチ(形)は、三角が主流で、これは運搬に適していたり、明治期の国定教科書のサルカニ合戦の挿絵で、カニ(蟹)が持つおにぎりが三角形だったため、全国的に三角おにぎりが広がったとされています。また、関西では俵、九州では丸(ボール)、東北では円盤形が見られます。
おにぎり(具入り、海苔(のり)巻き、ウィキペディア、Google画像)
(解説) 具材(ぐざい)は、鮭(さけ)、梅干し、明太子(めんたいこ)、ツナ(マグロ缶)、昆布(こんぶ)、鰹節(おかか、とも)、たらこ、などが定番となっています。
梅干しを含む日の丸弁当というのは、主食は99%がコメ(米)で、副食は梅干し一つだけで、栄養学的には、低カロリーです。が、この一粒の梅干(アルカリ性食品)は、胃の中に入るとすぐ、99%のコメ(米、酸性食品)の酸性を中和し、食べたコメ(米)のほとんどが吸収されるので、労働のための理想食となります。
日本各地のおにぎり(ふるさとおにぎり紀行、北陸中日新聞、Google画像)
(解説) 現在、日本各地のおにぎりには、バター焼きおにぎり(北海道)、だまこ鍋(団子状のごはん含む、秋田県)、みそ焼きおにぎり(宮城県)、弁慶めし(山形県)、五目おにぎりの笹巻き(福島県)、けんさ焼きおにぎり(新潟県)、朴葉(ほおば)めし(富山県)、とろろ昆布おにぎり(富山県)のほか、
花豆入りおこわおにぎり(群馬県)、百万遍おにぎり(山梨県)、天むす(愛知県)、めはりずし(漬物でくるんだおにぎり、三重県)、黒豆ごはんおにぎり(兵庫県)、わかめおのぎり(山口県)、ごっくうさん(円すい形のおにぎり、佐賀県)、とうきび飯のおにぎり(宮崎県)、ジューシーおにぎり(たきこみご飯のおにぎり、沖縄県)など、地方色豊かなおにぎりが登場し、販売されています。
(参考文献) 新村出編: 広辞苑(第四版)、岩波書店(1991); 北陸中日新聞: ふるさとおにぎり紀行、こころも満たすおにぎり、世界と日本、大図解シリーズ、No.1169、2014年10月19日(日)朝刊.
(参考資料) ○ 杉谷チャバタケ遺跡(日本最古のおにぎり、チマキ状炭化米塊、中能登の遺跡、石川県、おにぎり Japan): https://www.onigiri-japan.com/archives/232
○ おにぎり(ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%AB%E3%81%8E%E3%82%8A
○ イネ(稲)にまつわる歴史伝承、イネの起源、分類と品種、米の栄養成分、イネの生育と栽培、病虫害、収穫、米の生産と流通、とは(2011.6.17): http://kanazawa-sakurada.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/184.html
○ イネ(稲)のデンプン(多糖類、堅さ、粘り、甘さ、ヨウ素との反応)、モチ米とウルチ米の加工食品(米のアミロースは堅さ、アミロペクチンは粘り、うまさ)、農業カレンダー、天皇陛下がもみまき、とは(2012.4.1): http://kanazawa-sakurada.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/239.html
○ 塩(食塩とも)、おにぎりと塩、スイカと塩、家畜の草食動物(牛、馬)と塩、塩の主成分(塩化ナトリウム)の働き、塩の清めの役目、忠臣蔵の発端は塩をめぐる商業利権、とは(2012.5.29): http://kanazawa-sakurada.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/250.htmll
○ 梅干(うめぼし)、烏梅(うばい)と梅エキスの薬用効果、日の丸弁当という合理的な食品、とは(2013.1.24): http://kanazawa-sakurada.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-8aa6.html
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