カテゴリー「● 資源(オイル、天然ガス、ウラン、レアメタル)、エネルギー(火力、原子力)、核分裂生成物、溶媒抽出(放射性トレーサー)」の7件の記事

2013年4月13日 (土)

放射性物質(セシウム137、ヨウ素131、ストロンチウム90、プルトニウム239など)、ウランの核分裂生成物(約80種)で、人体の内部被爆による悪影響を及ぼすもの、とは(2013.4.13)

  東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故では、セシウム137ヨウ素131は、共に大気中に放出された量が最も多く、放射性物質の大半を占めています。

 セシウム137ヨウ素131は、土や水などにくっつきやすく、空気中を漂っているときに雨が降ると、一緒に地表に落ち、長い間放射線を放出します。また、セシウム137は軽い原子なので、第1原発から約270キロ離れた長野県東部でも検出されています。

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東京電力福島第一原子力発電所事故主な放射性物質と自然界への汚染の広がるイメージ、朝日新聞、2011年(平成23年)11月27日)

(解説) 事故直後は最初、希ガスのキセノン133半減期5.2日、β線)が放出されましたが、気体なので、水や土にくっつきにくく、空中に拡散し、土壌や食品からは検出されませんでした。

 注意を要する放射性物質は、人体に取り込まれ内部被爆の影響が大きいものです。特に、ヨウ素131半減期8.04日、β線)は、甲状腺、セシウム137同30.1年、γ線)は筋肉、ストロンチウム90同28.8年、β線)は骨というように、人体に蓄積されやすいところがあります。放射能をもつ原子核の数が半分になるまでの時間が半減期で、原子の数値は、原子核中の陽子の数と中性子の数の和で、質量数といいます。

 プルトニウム239半減期2万4千百年、α線)は、α(アルファ)の放射線を放出し、空中で4cm程度しか届かないのですが、半減期が長く、肺が吸い込むと放射線を生涯にわたり受け続け、がんにつながる恐れがあります。また、原発沿岸の海底土や敷地内の汚染水から魚が取り込み、その魚を食べて人が被爆する恐れもあり、詳しい調査が求められています。

(参考文献) 伊佐公男、内田高峰、関崎正夫、本浄高治、増田芳男、宮城陽(共著): 化学の目でみる物質の世界(第4版)、p.32~35、天然放射性元素、元素の人工変換、内田老鶴圃(2003); 朝日新聞: ニュースがわからん!ワイド、放射性物質 影響に違いはある? セシウムとヨウ素に注意 軽いから遠くまで飛ぶ、2011年(平成23年)11月27日朝刊.

(追加説明) ○ 原子力発電は、燃料のウラン235核分裂させ、生ずる熱で水蒸気をつくり、発電機を回して発電しています。

○ 天然産出するウランは、ほとんどウラン238ですが、0.7%のウラン235(質量数が235のウラン)が含まれています。このウラン235を濃縮して低速中性子を当てると、1個の原子核が分裂して、大きなエネルギーを放出し、約80種類放射性物質を生じ、この現象を核分裂といいます。このとき副生した中性子はさらに他のウラン235にぶつかって次の分裂を起こします。この繰り返しを連鎖反応(れんさはんのう)といい、制御棒(カドミウム、ホウ素など含む)、炭素棒や重水に中性子を吸収させて連鎖反応の速度を遅くしたのが原子炉です。

○ ウランなどが自然に放射線放出する性質を放射能といい、放射能をもった物質を放射性物質という。放射線には、物質を突き抜ける能力(透過力)の小さい順に、α線(アルファ線、ヘリウムの原子核の流れ)、β線(ベータ線、高速の電子の流れ)、γ線(ガンマ線、電磁波)の3種類があります。

○ 放射性物質で汚染された「指定廃棄物」は、福島第一原発の事故で出た放射性のセシウム137の濃度が1キロ当たり8千ベクレルを超える廃棄物です。法律で国が処分に責任を持つことになっています。 塵(ごみ)を焼いて出た灰や下水処理後の汚泥、乾燥した稲わらが中心で、セシウム137が濃縮されています。現在も指定廃棄物は増え続けており、地面を掘ってコンクリートで囲い、屋根もつけた施設内に埋めておくのですが、最終処分場の候補地は地元の猛反発で、不安定な「仮置き」となっています。(朝日新聞、2012年(平成24年)10月5日)

2012年9月 8日 (土)

燃える氷と呼ばれる天然ガス、高圧・低温な深海底や永久凍土地帯に存在するメタンハイドレート、とは(2012.9.8)

   将来の天然ガス資源として注目されているものに、メタンハイドレートがあります。これを資源として利用するため、国家プロジェクトとして、海底のメタンハイドレート層から天然ンガスを取り出す方法についての研究が進んでいます。そこで、その現状について調べてみました。

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メタンハイドレート(燃える氷、左上 分子構造、google画像) メタンハイドレート(ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88

 (解説) メタンハイドレートは、水の分子がかご状に配列してできた空間の中に、メタンの分子が取り込まれたシャーベット状の物質で、見かけは氷に似ています。 これを1気圧の室温に置いておくと、表面にある水分子のかご状の配列がくずれてメタン分子が飛び出します。このとき着火すると、燃えるメタン分子の熱エネルギーで、次つぎに水分子のかご状の配列がくずれてメタン分子が飛び出し、まるで氷が燃えるように燃え続けます。 

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メタンハイドレートの分布図(日本周辺海域、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構他、2000、google画像)   メタンハイドレートの開発(エネルギー源の石油依存低減、新エネルギー、最近の取組、資源エネルギー庁、経済産業省: http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2006EnergyHTML/html/i1240000.html

(解説) メタンハイドレートは、陸上では永久凍土地帯(えいきゅうとうどちたい)に、海洋では高圧・低温な深海底、大陸の縁辺部(えんぺいぶ)に存在します。日本近海でも、オホーツク海をはじめとした北海道周辺や、本州の静岡県から高知県の沖にある南海トラフと呼ばれる地域の海底に広く分布しています。

 地球の深部から発生する深層(しんそう)ガスや堆積(たいせき)した有機物から発生した天然ガスが、海水などの水分と反応し、メタンハイドレートができると考えられています。

 メタンハイドレートとその下に閉じ込められているガス総量は、日本の天然ガス消費量の130年分以上と推定され、将来の天然ガス資源として期待されています。

 が、うまく採掘できず、メタンガスが大気中に漏れることになると、メタンは二酸化炭素よりもはるかに大きな温室効果をもつことから、地球の温暖化に影響を与えるかも知れないという懸念もあります。

現在、まだメタンハイドレート採掘方法は確立されておらず、太平洋沖を中心に調査や実験が行われています。また、この調査や開発を日本海側でも進めようと、新潟、京都、秋田など日本海沿岸の10府県が、2012年(平成24年)9月8日、「海洋エネルギー資源開発促進日本海連合」を設立しました。

(参考文献) 日本化学会編: 化学ってそういうこと! 夢が広がる分子の世界(第1版)、p.86~87、石油に代わる燃える氷ってなあに? 資源として期待されるメタンハイドレート、化学同人(2003); 太田次郎、山崎和夫編: 高等学校 新編 理科総合A 改訂版、物質とエネルギーの探求、p.110 サイエンスBOX メタンハイドレート、啓林館(2005).

2012年7月20日 (金)

頁岩(けつがん、シェール)と呼ばれる泥岩層に含まれている新たな資源、シェールガス、シェールオイル(シェールガス革命!)、とは(2012.7.20)

   最近、新たな資源として、地下にある頁岩(けつがん、シェール)と呼ばれる泥岩(でいがん)の層に含まれている天然ガス、シェールガス、またシェールガスと同じ泥岩の層に含まれて石油、シェールオイルのことをよく耳にします。これらは、シェールガス革命と呼ばれていますが、いかなるものか、改めて調べて見ました。

 頁岩(けつがん、泥板岩とも)は、広辞苑によれば、堆積岩の1つで、泥が固結した岩石(泥岩)のうち、一定方向に薄くはがれる性質をもつもので、色は淡灰、暗灰、黒褐色などです。石灰岩、砂岩などと相重なり、中生層、第三紀層などの地層をなしています。

 頁岩油(けつがんゆ、シェール油とも)は、オイルシェールを乾留(かんりゅう)、または水蒸気蒸留して得られる油です。石油の原油に似ていて、各種炭化水素のほか、タール酸(フェノール酸、クレゾール酸、キシレノール類など)、タール塩基(主成分はピリジン類、キノリン類など)を含み、原油と同じように使えます。

○ シェールガス

 シェールガスは地下にある「頁岩(けつがん)、シェール」と呼ばれる硬(かた)い泥岩(でいがん)の中に閉じ込められています。泥岩の中の有機物(ゆうきぶつ)が地下の温度と圧力の上昇で熟成(じゅくせい、長時間放置して分解されること)し、残ったものです。

 原油価格が高騰(こうとう)し、高かった井戸掘りでも採算(さいさん)がとれるようになりました。ここ数年、加えて井戸掘り技術も進み、強い水圧で岩盤(がんばん)に割れ目を入れて、米国(アメリカ)やカナダで安くたくさん採掘されるようになりました。が、地下水汚染や、採掘で地震を誘発(ゆうはつ)する可能性もあり、課題の克服も大切です。

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シェールガス埋蔵量(世界全体では456兆立方メートル、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のまとめによる)

(解説) 天然ガスの埋蔵量(まいぞうりょう)は60年分ほどでしたが、それがシェールの登場で、経済性も踏まえ、人類が活用できる量は少なくとも250年以上にまで伸びたと言われています。たくさんシェールが出るようになった米国(アメリカ)では、液化天然ガス(LNG)を輸入する必要がなくなりました。

 シェールガス北米(北アメリカ)のほか、欧州(ヨーロッパ)や豪州(オーストラリア)、中国アフリカなど世界中にあります。国際石油資本(メジャー)も続々と進出しています。米国(アメリカ)はガス輸出の解禁を考え始め、大手商社や東京ガスも輸入を準備中です。

○ シェールオイル

 シェールオイルは、地下にある「頁岩(けつがん)、シェール」と呼ばれる泥岩(でいがん)の層に含まれている石油のことで、基本的にシェールガスと同じ技術で採れます。これまで採掘が難しかったが、強い水圧をかけて岩盤層に亀裂(きれつ)を入れて取り出す方法が開発され、生産しやすくなりました。

 原油価格の高騰で採掘コストも見合うようになり、米国(アメリカ)では、シェールオイルは盛んに生産されるようになっています。泥岩の中のシェールオイルは石油になった後、さらに熟成(じゅくせい)が進んでシェールガスになります。これらはシェ-ルガス革命と呼ばれています。

 日本では、石油やガスの採掘会社「石油資源開発」が秋田県由利本荘市の「鮎川油ガス田」の岩盤層に、米国(アメリカ)と同じような良質のシェールオイルがあることを確認しました。石油資源開発は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の協力を得て、来年にも地下1000~1500mで試験生産を始め、生産が軌道に乗れば、国内で順次販売する予定です。  国内の油ガス田(JAPEX、石油資源開発株式会社): http://www.japex.co.jp/business/japan/field.html

 関係者によると、総量で500万バレル程度の石油が採掘できる見込みという。なお、鮎川油ガス田は、すでに1995年(平成7年)から石油資源開発が石油と天然ガスを生産しています。秋田県内にはほかにも有望なシェールオイル田が複数あるとみており、これらを合わせ、1億バレルの石油が5年以内をめどに開発されると、国内の年間石油消費量の1割弱にあたる規模になり、国内の自給率も高まることが期待されています。

{参考文献) 下中邦彦編: 小百科事典(初版)、平凡社(1973); 新村出編: 広辞苑(第四版)、岩波書店(1991); 大木道則・大沢利昭・田中元治・千原秀昭編: 化学事典(第1版)、東京化学同人(1994); 朝日新聞(朝刊): 秋田でシェールオイル 国内初、試験生産へ、2012年(平成24年)7月7日(土); 朝日新聞(朝刊): ニュースがわからん! シェールガスが話題になているね 泥岩の中の天然ガスを採掘できるようになった、2012年(平成24年)7月20日(金).

 

2011年6月10日 (金)

ウラン(天王星の名に由来)、原子力(核エネルギーの利用と問題)、放射能(人体と生命への影響)、私の体験(放射性トレーサーによる溶媒抽出の研究)、とは(2011.6.10)

   1789年、M. H. Klaproth(M. H. クラプロート、1743~1817、ドイツ)は、Saxony(ザクセン、ドイツ)地方産のピッチブレンド(閃ウラン鉱)から新元素(のちウラン酸化物と判明!)を発見し、1781年、F. W. Herschel(F. W. ハーシェル、1738~1822、ドイツ生まれ、イギリス)が発見した新惑星、Uranus(ウラヌス天王星)にちなんでウラン命名しました。

○ 原子力(核エネルギーの利用と問題)

 原子核分裂(げんしかくぶんれつ)は、ウラン、トリウム、プルトニウムなどの重い原子核が、中性子などの照射によってほぼ同程度の大きさの2個の原子核に分裂する現象で、1938年、Otto Hahn(オットーハーン、1879~1968、ドイツ)らが発見しました。この際、大きなエネルギーの放出を伴い、これを用いて原子爆弾原子力発電が開発されました。

 1945年7月、人類初の核実験がアラモゴード(ニューメキシコ、米国)で成功し、J. R. Oppenheimer(J. R. オッペンハイマー、1904~1967、米国)は、実験責任者でしたが、広島(ウラン爆弾)、長崎(プルトニウム爆弾)への原爆投下後、「科学者は罪を知った」と語ったという。

 原子力発電は、化石燃料を利用する火力発電での問題、燃料の燃焼によって二酸化炭素や硫黄酸化物などの地球環境に影響を与える排ガスを生じず、また、他のいろいろなエネルギーに少ない損失で変えることができるというすぐれた性質をもっています。しかし、原子炉の核燃料の中には、核分裂によって生じた有害な放射性物質蓄積さtれます。放射性物質が外部に洩(も)れると環境汚染をひき起こすことが考えられるので、使用済の燃料をいかに安全に長期間管理するかという問題を抱えています

 1979年3月28日、スリーマイル島(ペンシルバニア、米国)での炉心熔融(メルトダウン)による放射性物質(希ガスのキセノン、ヨウ素)の放出(水素爆発は起こらず、セシウムの放出は確認されていない)、1986年4月26日、チェルノブイリ(ソ連、のちウクライナ)での炉心が直接大気に露出し、約10日間、大量の放射性物質(希ガスのキセノン、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムなど)放出などの原子力発電所大事故がありました。

 一方、福島(日本)の場合は、2011年(平成23年)3月11日、東日本大震災のとき起きた、東京電力福島第一原発での炉心熔融(メルトダウン)から炉心貫通(メルトスルー)、水素爆発による放射性物質(希ガスのキセノン、ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、コバルト、テルル、プルトニウムも確認!など)放出の大事故ですが、今なお解決の先が見えない深刻な状態です。 

 2000年4月、事故14年目の追悼式で、ロシア副首相は、チェルノブイル事故当時の現場処理に携わった86万人の作業員の内、5万5千人以上が亡くなった事実を明らかにしました。2005年には、ロシアの社会保険発展相が、この事故で健康を害した人は、ロシアで145万人であると述べています。2006年4月現在、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの健康被害者は700万人とされています。

 なかでも、これらの国の子供たちの白血病甲状腺障害は悲惨なものです。また、事故後に生まれた18才以下の子供たちのなかで、体内被ばくによって健康を害している人は22万6千人いるという。被害は年を経るにつれて大きくなるであろうし、そのうちに肝臓ガンなどの晩発性のガン患者があらわれるであろう。ーーーーーー

 国や電力会社は何を考えているのだろうか。自分たちが、今、よければ私たちの子孫はどんなに苦しんでもよいというのだろうか? 皆さん、どうぞ放射能の恐ろしさをお友達に、家族に話していただきたい。人類は滅亡するかも知れないのだ。

 私たちは節約をして生きなければならない。特に電気は節約しなければならない。力を合わせて、地球を守ろうではないか!(いのちと放射能(ちくま文庫)、文庫版への長いあとがき、2007年8月15日 柳澤桂子、より)

 使用済み核燃料(再処理と保管の政策)

 日本では、使用済み燃料の再処理ができないので、イギリスとフランスに頼んで再処理してもらっていました。が、もう再処理してくれないばかりか、残っている使用済み燃料を返してきました。そこで、下北半島、六ヶ所村(青森)にフランスの技術を採用して再処理工場をつくり、使用済み燃料を再処理して、プルトニウムを取り出す計画が立てられました。

 再処理工場というのは、使用済み燃料を切り刻んで、硝酸溶液のなかに溶かして、使用済み燃料の中にあるウラン(94%)、プルトニウム(1%)、核分裂生成物(5%)を分けて取り出すための施設です。

 セラフィールド(イギリス)の再処理工場からの放射性セシウム-137の放出により、ヨーロッパ周辺の海域において、表面海水の放射性セシウムによる汚染が起こりました。周辺諸国からの抗議もあり、現在は放射能の放出が大幅に減少しています。 また、セラフィールド(イギリス)とラ・アーグ(フランス)の再処理工場付近では高率な白血病の発生が、政府によって確認されているという。

 イギリスとフランスで再処理され副生する高レベルガラス固化体は、日本に返還され、現在、六ヶ所再処理工場で保管されています。このガラス固化体の側に立つと数秒で死亡するとのこと、40年ほど冷却したのち、地下深く埋めてしまおうとしています。これは、数万年、生命環境から隔離しなければなりません。

 一方、米国、カナダ、北欧、ドイツでは、使用済み燃料を再処理せず、そのまま保管する政策をとっています。この方式でも使用済み燃料を数万年の間、管理しなければなりません。が、再処理して環境を汚染するよりはまだましな選択です。完全な埋め捨てにはせず、科学技術の進歩を待ち、その時点で取り出し再利用も可能にしておくようです。

 ところで、日本の再処理工場、原子力発電所などの排気筒では、空中に大量の放射性希ガス、Kr(クリプトン)ー85、放射性炭素、C(炭素)-14などが放出され、また、海洋放出口では、沖合3km、水深44mから使用済み燃料のトリチウムなどのいろいろな放射性廃液が放出されています。

 これは、国の放射能規制法が余りに非現実的なものであり、この「国による不法行為」には、原子力(核燃料サイクル)を最優先させる国のエネルギー政策、その背景には、大規模予算に群がる官僚、政治家、電気事業者、大企業の緊密な利権関係が挙げられています。 (2007年8月、柳澤桂子: いのちと放射能(ちくま文庫)、 解説、永田文夫(三陸の海を放射能から守る岩手の会 世話人)、より).

 また、高木仁三郎(たかぎじんざぶろう、1938~2000)核化学者は、著書の中で、原子力の歴史の総括として、「このへんで核の時代に終止符を打ち、現存する核兵器やプルトニウムや放射性廃棄物を、知恵を合わせて厳格に管理していくことに努め、より平和で安全なものへと文明を転換していく努力をすれば、まだ間に合うと思うのです。

 ーーーー、日本でも、その方向にもっと大胆に踏み出すことが望まれます。大事なことは、私たちが未来を自分の手にすることができると、希望を持ち続けることでしょう。開けてしまったパンドラの箱を閉じることはできないでしょうが、その中に残った「希望」を取り出し、育てていくことはできるのではないでしょうか」と訴えておられます。 (2000年7月、高木仁三郎: 原子力の神話からの解放(講談社)、パンドラの箱は閉じることはできるのかー結びに代えて、より)

○ 放射線(医学、農業、工業、考古学、トレーサー法への利用)

  原子核の崩壊によって出る放射線には、物質を突き抜ける能力(透過力)の小さい順に、α線(アルファ線、ヘリウムの原子核の流れ)、β線(ベータ線、高速の電子の流れ)、γ線(ガンマ線、非常に波長の短い電磁波)などがあります。これらの放射線を放出する性質を放射能(ほうしゃのう)といい、いずれも気体を電離(物質中の原子から電子を引きはがしてイオンをつくること)し、写真作用、蛍光作用を示します。

 放射能をもつ原子核が崩壊によって初めの数の半分になるまでの時間半減期(はんげんき)という。 放射性元素半減期は、(ウラン)-239は23.5分、(ヨウ素)-131は8.04日、Sr(ストロンチウム)-89は50.5日、Cs(セシウム)-134は2.06年、Kr(クリプトン)-85は10.7年、Sr(ストロンチウム)-90は28.8年、Te(テルル)ー132は3.20日、Pu(プルトニウム)ー239は2.41×10の4乗年、(カリウム)-40は1.28×10の9乗年、(ウラン)-238は4.47×10の9乗年、Th(トリウム)-232は1.41×10の10乗年などです。

 放射線は、医学では、病気の診断やがんの治療、農業では、突然変異を起こさせて植物を品種改良したり、食品保存のために発芽をおさえたりするのに利用されています。工業では、ジェットエンジンなどの非破壊検査(対象を壊さずに内部を調べること)、プラスチックの強度や耐熱性の向上、医療器具の減菌などに使われています。考古学では、微量な放射線を出す元素の分析を利用して年代測定を行っています。また、植物などに微量の放射性同位体を注入することにより、生体内での元素の動きや化学反応のしくみを調べることができます。このような放射性同位体の利用法をトレーサー法といい、農学、医学、工業などで広く用いられています。

 放射能(人体と生命への影響)

 2005年(平成17年)6月、米国科学アカデミーは「放射能の被ばくには、これ以下なら安全と言える量はない」ことを、大規模疫学(えきがく)調査に基づき公表しました。

 柳澤桂子(やなぎさわけいこ、1938~ )、生命科学者によれば、「少量の放射線でも危険!放射能の生命への作用については、細胞分裂中DNA複製されるとき最も放射線に弱く傷つきやすいということ、細胞分裂が盛んな胎児子ども最も被害を受けやすいこと、また放射能の種類によっては、体内に入ると、(ヨウ素)-131は甲状腺Sr(ストロンチウム)-90はなど特定の臓器に集まり、被ばくされます」とのことです。また、放射性Cs(セシウム)ー137は全身に、のち数ヶ月で尿中に排出され、放射性希ガスのKr(クリプトン)-85は吸い込んでも、血液と循環し、呼気として排出されるという。

 人間が大量の放射線を浴びると吐き気、嘔吐(おうと)、下痢(げり)や神経症状などの急性放射線障害を起こし、ひどい場合には死に至ります。また、急性障害が起こらない量の放射線でも、浴びた放射線の量に応じて、後になってがん遺伝子障害を発病する危険が増えると考えられています。

○ 私の体験(放射性トレーサーによる溶媒抽出の研究)

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京都大学放射性同位元素総合センター、1961年(昭和36年)当時の分館(京都大学化学研究所、放射性同位元素総合研究室) 京都大学放射性同位元素総合センター(ホームページ): http://www.rirc.kyoto-u.ac.jp/

 私は、1964年(昭和39年)、京都大学大学院(理学研究科化学専攻、放射化学研究室、修士課程)の学生の頃、北部構内(追分町、北白川、左京区)の京都大学化学研究所、放射性同位元素総合研究室(1971年、昭和46年より京都大学放射性同位元素総合センター、2011年、平成23年より京都大学 環境安全保健機構へ)で、はじめて、放射性トレーサーとして、Eu(ユーロピウム)ー152(半減期13.5年),ー154(半減期8.59年)を用い、β・ジケトン(ベンゾイルトリフルオロアセトン)による希土類元素(ユーロピウム)の溶媒抽出における酸素および窒素原子含有溶媒の協同効果を研究したことがあります。実験室に入室したとき、白衣姿の重松先生が大きなビーカーの中の溶液をガラス棒で攪拌(かくはん)しておられましたが、それはウラン溶液ということで印象に残っています。(T. Shigematsu(重松), T. Tabushi(田伏), M. Matsui(松井), T. Honjo(本浄): The Solvent Extraction of Europium Ions with Benzoyltrifluoroacetone. The Synergistic Effect of Oxygen- and Nitrogen-containing Solvents, Bull. Chem. Soc. Jpn(日本化学会欧文誌).,39(巻), 165-169(ページ)(1966). 掲載)  論文リスト(1957~1979、重松恒信教授): http://inter3.kuicr.kyoto-u.ac.jp/publications/pub1957-1979_J.html

 放射性物質を扱うということで、病院のような雰囲気の実験室への入退室のとき、スリッパを履きかえ、白衣も着替え、放射能汚染をチェックしました。実験台の上には、片面がビニールあるいはポリエチレンシートの防水した濾紙(ろし)を敷き、ビニールあるいはゴム手袋をはめ、実験しました。

 抽出分液漏斗(ぶんえきろうと)中の水溶液と有機溶媒中の希土類元素(ユーロピウム)の放射能は、安全ピペッターを用いて、それぞれの溶液の一定量をガラス試験管に採取し、NaI(ヨウ化ナトリウム、Tl、タリウム)シンチレーションカウンターでγ(ガンマ)線を計数し、抽出率を算出、ユーロピウムの抽出挙動を調べました。

 小さなガラスビンに入ったユーロピウムの高放射性原液(オークリッジ・ナショナルラボラトリー、テネシー、米国)は、鉛ブロックで囲まれた鉛の容器内に貯蔵されていて、1分間に数十万カウント程度の強さの量を注射針で採取し、実験のとき数万カウントになるよう酸でうすめて使用しました。

 実験廃液は、水溶液と有機溶液に分けてポリ容器に入れて保管し、また濾紙やペーパータオルなどの紙類はビニールの袋に入れ、放射性物質の管理規則に従い処理されました。ガラス器具は塩酸あるいは硝酸溶液に浸した後、水道水、蒸留水で順次洗浄し、自然乾燥あるいは電気乾燥しました。

 実験室には、手で持ってγ(ガンマ)線を測定できる、GM(ガイガーミューラー)カウンターが置いてあって、放射能汚染をチェックしました。水溶液中の水素イオン濃度を測定する日立・堀場pHメーターのガラス電極に放射性物質が塩酸あるいは硝酸で洗浄しても落ちないほど強く吸着していて、GM(ガイガーミューラー)カウンターの針が大きく振れて驚いたことを覚えています。

  実験中は必ず白衣にフイルムバッチをつけ、定期的に放射能の被ばくをチェックし、大学の保健管理センターでは血液検査を受け、徹底的な健康管理が行われていました。

 また、京都大学原子炉実験所(熊取、泉南、大阪)に、1964年(昭和39年)頃、はじめて、指導を受けていた田伏先生と訪れ、筒井先生、東村先生、岩田先生による管理の研究施設を見学し、会議にもオブザーバーとして出席しました。その後、トレーサー実験のため、原子炉の熱中性子による希土類元素(Nd、Tb,Lu)酸化物の照射の時、また、ずっと後、金沢に来てから小山先生主催の研究報告会の時など、何度か訪れたことがあります。

 1963年(昭和38年)、初代所長として木村毅一教授(1904~1992)が就任され、1968年(昭和43年)、京都大学本部近くの教室で研究の想い出話を交えた定年退官の最終講義をされることになり、私も研究仲間にさそわれて拝聴したのですが、真ん前の席で湯川秀樹教授(1907~1981)が静かにうなずきながら聞いておられ、講義を終えた木村教授が涙を流さんばかりに感激しておられたのが印象に残っています。

 京都大学原子炉実験所記念碑には、木村教授の言葉、「凡てのことは、今ここにこめられてあり、今ここはおのずからある」が刻まれています。仏教雑誌で見た「一切」を、「凡て」に替えた言葉という。京都大学原子炉実験所(ホ-ムページ): http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/

(参考文献) E. Peligot: Ann, Chim. Phys., (3) 5, 5~47(1842);  本浄高治: 無機化合物の有機溶媒への抽出の歴史、1842~1941、化学史研究、第16号、p.22~27(1981); 新村出編: 広辞苑、岩波書店(1991); 太田次郎、山崎和夫編(太田、山崎、磯崎、植松、江里口、西田、福岡、本浄、増沢、本川、山崎、山本ほか13名): Science、高等学校 理科総合A(改訂版)、物質とエネルギー、啓林館(2005); 柳澤桂子: いのちと放射能、ちくま文庫(2007); 高木仁三郎: 原子力神話からの解放ー日本を滅ぼす九つの呪縛、講談社(2011).

(参考資料) ウランの科学的歴史(ウランガラス同好会): http://uranglass.gooside.com/UranHistory/UranHistory.htm

(追加説明) ○ ウラン元素の発見者、M. H. Klaproth(M. H. クラプロート)は、天然産の黄色酸化物を炭素で還元して黒色の金属性物質を得て、これをウランの金属だと考えました。その後、約50年間、それを疑う人は誰もいなかったのですが、1841年E. M. Peligot(E. M. ペリゴー、1811~1890、フランス)が無水四塩化ウランを金属カリウムで還元し、金属ウランの単離(たんり)にはじめて成功し、M. H. Klaproth(クラプロート)が得たものはウランの酸化物UO2であることを明らかにしました。したがって、E. M. Peligot(ペリゴー)こそ近代ウラン化学のパイオニアーと考えられます。

 ウラン鉱物放射線は、1897年、A. H. Becquerel(A. H. ベクレル、1852~1908、フランス)によって発見されました。その翌年、1898年、Pierre ・Curie(ピエール・キュリー、1859~1906、フランス)、Marie・ Curie(マリ・キュリー、1867~1934、ポーランド生まれ、フランス)夫妻は、ヨアヒムスタール鉱山(チェコスロバキア)で得たウラン鉱石からラジウムポロニウム抽出成功し、自然に放射性壊変を起こす元素の存在が世界で初めて明らかにされました。 

○ 放射能をもつ放射性元素として、天然に存在するものはウラン系列、アクチニウム系列、トリウム系列の諸元素があります。また、人工的につくられるネプツニウム系列の元素もこれに属します。なお、超ウラン元素はすべて人工放射性元素です。

 超ウラン元素(ネプチニウム、プルトニウム)の命名は、ウランにおけるウラヌス(天王星)と同じように、その当時発見された新惑星名にちなんで、ネプチニウムはNeptune(ネプチューン、海王星)、プルトニウムはPluto(プルトー、冥王星)が当てられました。これらの元素は、1940年、ウランに中性子をぶつけてつくり出された最初の超ウラン元素で、E. M. McMillan(E. M. マクミラン、1907~1991、米国)とP. H. Abelson(P. H. アベルソン、1913~2004、米国)によって人工合成されました。

○ 原子は原子核と電子からできています。原子核は正の電気をもつ陽子と電気をもたない中性子からできています。原子核の陽子や中性子の数は原子の種類によって異なります。自然界に存在する原子には、原子番号(陽子の数)は同じであるが、質量数の異なる原子が存在し、これらを互いに同位体アイソトープ)という。原子核中の陽子の数と中性子の数の和を、その原子の質量数という。

 天然の元素の中で最も原子番号の大きいウランには、質量数の異なるU(ウラン)-238、U(ウラン)ー235、U(ウラン)ー234の同位体があります。 このうちU(ウラン)ー235に中性子をぶつけると、ウランの原子核は2つに分裂し大きなエネルギーを放出します。これを核分裂という。

 Uー235の核分裂と連鎖反応については、まずウランの原子核に中性子が当たり、核分裂すると、2~3個の中性子と放射線が飛び出し、分裂した核などの運動エネルギーとなります。核分裂で飛び出した中性子は、また別のウランの原子を核分裂させます。このように、核分裂が連続的に起こる反応を連鎖反応という。 U-235が1kg核分裂をしたときに生じるエネルギーは、石油2000kl(ドラム缶約1万本)のエネルギーに相当します。

○ 無機化合物の有機溶媒への抽出の歴史 1842年、E. M. Peligot(E. M. ペリゴー、1811~1890、フランス)が硝酸ウラニルの硝酸水溶液からジエチルエーテルへの溶解と抽出の発見がイオン会合抽出の最初の報告です。無機化合物の有機溶媒への抽出に関する発展の足どりはかなり遅かったのですが、第二次世界大戦(1939年9月1日~1945年8月15日)後、アメリカで溶媒抽出法がウラン、プルトニウムなど核エネルギー工業に必要な超純物質を得るための最もすぐれた手段であることが認識され、大きな発展をとげるようになりました。

 そして、E. M. Peligotによる硝酸ウラニルのエーテル抽出の発見が約100年後原子エネルギー開発において息を吹き返し、日本と世界の歴史を大きく変えることになりました。その後、エーテル(エチルエーテルとも)は沸点が35℃と低く、引火性があるので、より安定なリン酸トリブチル(TBP、沸点289℃)が開発され、ウラン、プルトニウムの抽出剤として用いられました。

○ 核燃料再処理 原子爆弾製造のマンハッタン計画では、照射ウランからプルトニウムを抽出するのに、リン酸ビスマス法の名で知られている沈殿分離法(共沈)が用いられました。しかし、現在では、抽出剤にリン酸トリブチル(TBP)、トリオクチルアミン(TOA),テノイルトリフルオロアセトン(TTA)を用いるPu(プルトニウム、Ⅳ)の溶媒抽出法が広く用いられています。(大木、大沢、田中、千原編: 化学辞典、東京化学同人(1994).より)

 ウラン同位元素(U-235,U-238)の熱拡散による分離 天然のウランには-238(99.28%)とー235(0.715%)の同位体があり、-235は原子核燃料に使われています。両者はウランのフッ化物(UF6)にして加熱すると56℃でガスとなるので、細いノズルから噴出させ、質量数の違いによる拡散速度の差を利用(1分子質量のわずかの差を利用)して分離し、-235の含有量を高めることができます。原子爆弾製造のマンハッタン計画において、ー235がこの方法で分離濃縮されたのは有名です。現在では遠心分離法が広く用いられています。(本浄(代表)、今泉、上田、澤田、田口、永長、長谷川、山田共著: 基礎分析化学、化学同人(1998).より)

○ 日本では、1957年(昭和32年)8月27日、午前5時23分、茨城県東海村の日本原子力研究所(のち日本原子力研究開発機構)の実験用1号原子炉が臨界(りんかい、中性子がウランー235にぶつかり、安定した核分裂の連鎖反応が続くこと)に成功し、はじめて、「原子の火」がともり、その後の原子力発電につながりました。1970年(昭和45年)代に原子力発電所の建設ラッシュとなり、1971年(昭和46年)には福島第1原発の運転が始まりました。(2011年(平成23年)6月4日(土)、サザエさんをさがして、原子力発電、「本当のあたたかさとは何だろう、何のために発展するのか?」、朝日新聞、朝刊より

○ 人の世 私たちはこの広大な宇宙の一点に生きています。150億年という宇宙の歴史の一点に生きています。時間的空間的に宇宙というスケールで自分を見つめてみようではありませんか。この宇宙の中で、人間とは自分とはいったい何なのでしょう。40億年の生命の歴史の中で、私とはいったい何なのでしょう。人間はどこからきて、どこえいくのでしょう。

 1.1日1日をていねいに、心をこめて生きること 2.お互いの人間存在の尊厳をみとめ合って(できればいたわりと愛情をもって)生きること 3.それと自然との接触を怠らぬこと 

結局のところ人の世詩も幸せもこの他になく、それ以外はすべて空しいことにすぎないのではないかな。

 これは、医師であった細川宏((ほそかわひろし、1922~1967、解剖学者、東大医学部教授)氏が、ガンで亡くなる28日前に書き残されたものです。これは、細川氏だけでなく、多くの宗教家や修行者や思索者や苦しみを生きぬいた人々が到達する共通の結論です。すべての欲を捨て去ったときに、人間は人間にとって一番大切なものが何であるかということを知るのです。(2007年8月、柳澤桂子: いのちと放射能(ちくま文庫)、 より)

しなう心  苦痛のはげしい時こそ しなやかな心を失うまい やわらかにしなう心である ふりつむ雪の重さを静かに受けとり 軟らかく身を撓(たわ)めつつ 春を待つ細い竹のしなやかさを思い浮かべて じっと苦しみに耐えてみよう(悲しみに耐える人の心情に重なり合います、細川宏さんの遺稿詩集、詩集 病者・花、現代社、より)

○ 素顔を見つめる  諸君。諸君がもし生活に多少とも退屈し、おれはこのままでええんやろうかと、ふと思われることがあればーーー、いやいや、きっと、そう思われるにちがいない。ーーーー そう思われたならば、ワシは諸君に一つの場所に行ってみることをお奨めする。それは病院だ。ーーー、病院とは、生活のなかで他人にみせる仮面ばかりかむっているワシらが、遂に自分の素顔とむきあわねばならぬ場所だ。

 わしは長い間、病院生活をやっとったから、これだけは確実に言えるのだが、夕暮れに灯(ともしび)がうるむ病院の窓では社会の地位や仕事がなんであれ、自分の人生をじっとふりかえる人びとが住んでいる。病苦のおかげでみんな、そうせざるをえんのでなア。 ワシらの生活には仮面をぬいで、自分の素顔とみきあおうとする時はそうざらにない。いや、ひょっとすると、素顔をみることが怖(おそろ)しいのかもしれんなア。ーーー(樋口清之編:生活歳時記、p.328、遠藤周作(1923~1996,作家)、素顔を見つめる、ぐうたら生活入門、三宝出版、より)

2011年1月11日 (火)

レアメタル(希少金属)の産地、先端産業(高機能材、電子機器、自動車)に不可欠、リチウムイオン電池、リチウムの産地、私の体験(溶媒抽出・国際学会、金属鉱山の見学)、とは(2011.1.11)

   最近、レアメタル希少金属、きしょうきんぞく)という言葉を、よく耳にします。なかでも、インジウム(In)、リチウム(Li)、レアアース(希土類、La~Lu)、プラチナ(白金、Pt)などは、液晶テレビ、携帯電話のバイブレーターをはじめ、次世代のハイブリッド車及び電気自動車などをつくるのに不可欠です。が、これらの主な産地は、中国南アフリカなどに偏在(へんざい)しているので、世界的な獲得競争が激化しています。

○ レアメタルの主な産地

 レアメタル希少金属、きしょうきんぞく)は、存在量そのものが少ない、広く分布していても経済的に採掘可能な鉱床が少ない、または、単体として抽出するのが困難などの理由で、産出の少ない金属の総称です。

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レアメタル世界の主な産地、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、独立行政法人、google画像) 

(解説) レアメタル(希少金属)の世界の主な産地は偏在しています。それらの生産比率(%)は、中国では、レアアース(希土類)97%、タングステン(W)75%、インジウム(In)58%、モリブデン(Mo)28%、マンガン(Mn)20%、ロシアでは、バナジウム(V)27%、ニッケル(Ni)17%、カナダでは、ニッケル(Ni)16%、米国ではモリブデン(Mo)29%、チリでは、リチウム(Li)44%、モリブデン(Mo)21%、オーストラリアでは、チタン(Ti)22%、マンガン(Mn)16%、コンゴ民主共和国では、コバルト(Co)45%、南アフリカでは、プラチナ(白金、Pt)77%、バナジウム(V)38%、クロム(Cr)45%、マンガン(Mn)21%など、となっています。

 ○ レアメタルの主な利用

 インジウムは液晶テレビや太陽電池パネルの透明電極、リチウムはリチウムイオン電池、レアアース(ネオジム、ジスプロシウム)はハイブリッド車のモーターに使う高性能な磁石、また、ネオジムは携帯電話のマナーモード振動に使うモーターの磁石、プラチナは自動車の排ガス浄化用触媒、燃料電池の材料などの用途があります。ガリウム(Ga)については、中国、ドイツ、日本、ロシアが主要な生産国で、発光ダイオード(LED)電球などに使われています。

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レアメタル高機能材、電子機器、自動車に不可欠、経済産業省(旧:通商産業省)、google画像) 

(解説) ハイブリッド車などに不可欠の高性能モーターでは、希土類磁石(ネオジム・鉄・ボロン磁石)、各種二次電池ではコバルト、マンガン、ニッケルなどが使用されています。また、液晶パネルの透明電極ではITO材(インジウム錫酸化物)が使用されています。さらに、加工用工具として、タングステンなどを含む超硬工具が使用され、また、レアアース(希土類)の一種、セリウム液晶用ガラスの研磨剤ジルコニウム電子材料などに使われています。

 環境・エネルギー分野においても、自動車の排ガス浄化触媒三元触媒、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物の除去)として、プラチナ、パラジウム、ロジウムなどが使用されています。また、今後、低公害車用として導入が期待されている燃料電池の触媒としてもプラチナが使用されています。

 鉄の磁石は、フェライト磁石(黒いセラミックス磁石)、アルニコ磁石(鉄とアルミニウムなどをとかして合わせた磁石)、希土類磁石(希土類元素のネオジム、プラセオジム、ジスプロシウムなど含む磁石)の三つに大別できます。それぞれの磁石の磁力を比べてみると、希土類磁石がもっとも強い磁力を持っています。

 コンピュータ用の小型希土類磁石としては、コンピュータのハードデイスクやCDなどに磁石が使われています。環境にやさしいハイブリッド自動車、燃料電池自動車を走らせるためには、強力なパワーが必要なので、もっとも磁力の強い希土類磁石を使用したモーターが使われています。

○ リチウムイオン電池、リチウムの主な産地

 最近、リチウム電池が注目されています。その主な理由は、電気自動車、パソコン、携帯電話などの電源には、充電と放電を繰り返し行い、大電流を取り出すことの出来る、大きな出力の二次電池(リチウムイオン電池、ニッケル水素電池など)の大きな出力、すなわち大電流を必要とするからです。 

 リチウムイオン電池は、軽くて、小さく、大量のエネルギーを詰め込むことが出来ます。そのエネルギー密度は現在では、150wh/kg、300wh/lとほぼ限界値に近づいています。また、電池の起電力(電圧/V)は、単3型電池では、普通の一次電池(マンガン電池、アルカリ電池など)は1.5V、二次電池ニッケル水素電池では1.2Vですが、リチウムイオン電池3.0Vと2倍ほど電圧が高い

  リチウムイオン電池の構造は、正極は、コバルト酸化物(コバルト酸リチウム、LiCoO2)が使われ、ここにリチウムイオンが出入りし、充放電が繰り返されます。負極は、カーボン(炭素)にリチウムイオンを挿入したもの(炭素材料、LixC)が使われ、カーボンの中にはリチウムイオンが出入りして充放電が繰り返されます。電解液は、PC(プロピレンカーボネイト)などをベースにした有機溶媒にLiPF6などの有機溶媒中で解離する塩を溶解したものが使われています。

 リチウム主な生産地は、南米のチリ(45%)、アルゼンチン(14%)のほか、オーストラリア(23%)、中国(8%などです。現在、世界のリチウム資源の半分は、南米ボリビアにあり、まだ未生産で、世界の6カ国の大企業8~9社が、その資源をコスト安で大量に獲得しようとしています。ボリビアのリチウム資源は、ウユニ塩湖に540万トンほどあり、太陽光により塩湖の水が蒸発し、水位が下がり、塩水が蒸発して、リチウムの粉が沈殿しています。

 ボリビア塩湖塩水中のリチウムを、抽出、吸着、凝縮、沈殿などの分離技術により、年間2~3万トン生産するプラントのプロジェクトが、日本の住友、三菱、また、フランスのボロレなど外国資本により計画されています。が、リチウムの偏在性は、リチウムイオン電池のハイブリッドカー、電気自動車への採用の増加と人気の高まりによっては、石油以上に厳しい制約資源となる可能性があります。 

 私は、溶媒抽出による金属元素分離挙動関する基礎研究を行ったことがあります。京都大学大学院(理学研究科)の学生の頃(1964~1969)は、主に希土類元素のほか、コバルト、亜鉛など、また、金沢大学(理学部)に勤務していた頃(1969~2006)は、主に希少金属、重金属のほか、リチウムなども研究しました。

 溶媒抽出は、水中の金属イオンを有機試薬(キレート剤、イオン会合剤など)を用いて有機溶媒(ベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ヘキサン、ケロシン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、リン酸トリブチル(TBP)、など)に抽出分離する手法で、金属鉱山での金属製錬やウラン、プルトニウムなど核燃料の分離精製の前処理に利用されています。

 私は溶媒抽出国際学会、アメリカ(1983、デンバー)、日本(1990、京都)、オーストラリア(1996、メルボルン)、スペイン(1999、バルセロナ)、南アフリカ(2002、ケープタウン)、中国(2005、北京)において研究発表したことがあります。その時必ず当地の主な金属鉱山と製錬所のツアーがあり、スペインでは露天掘りの希少金属鉱山と製錬所を見学し、そのスケールの大きさに驚いたことを覚えています。

(参考文献) 下中邦彦: 小百科事典、平凡社(1973); 日本化学会編: 化学ってそういうこと!ー夢が広がる分子の世界、化学同人(2003); 北陸中日新聞(朝刊): 偏在するレアメタル、次世代車やIT製品に必須、レアメタル官民が奔走、中国や南ア産地が偏在、商社自前採掘探る、2009年(平成21年)12月6日、より; 本浄(著者代表)、今泉、上田、澤田、田口、永長、長谷川、山田: 基礎分析化学、p.124~138、溶媒抽出法、化学同人(2010). 

(参考資料) レアメタルリンク集: http://gakusyu.ne.jp/linksyu/raremetal.htm

リチウムイオン電池(google画像検索): http://www.google.co.jp/images?hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E9%9B%BB%E6%B1%A0&um=1&ie=UTF-8&source=og&sa=N&tab=wi&biw=1004&bih=581

(追加説明) レアアース希土類、きどるい)は、ランタニド元素の総称で、原子番号57のランタンを代表として、化学的性質のよく似た71番元素のルテチウムまでの15元素の総称として普通用いられていますが、正しくはランタンを除いた14元素の総称です。化学的性質がよく似ていて,産出する場合も常に共存し、同種の化合物をつくりやすい。主要鉱石は、モナズ石、フェルグソン石、ガドリン石、サマルスキー石です。

 リチウムは、アルカリ金属元素の一つですが、化学的性質は一般にマグネシウム、カルシウムに似ています。金属としては、原子炉の制御棒、重合触媒として用いられ、各種合金の添加物、脱酸剤ともされています。岩石中には微量ですが広く分布しています。主要鉱石はリチア雲母、リチア輝石などです。                    

2010年7月27日 (火)

日本の発電のエネルギー、火力、原子力、再生可能な自然力の利用と地球温暖化対策、とは(2010.7.27)

  日本発電には、化石燃料による火力(石炭、石油、天然ガスなど)、核燃料による原子力(ウラニウム、プルトニウムなど)、再生可能な自然力(水力、地熱、風力、太陽光、バイオマスなど)などのエネルギー利用されています。これらの資源の約96%は外国からの輸入によるものです。

 現在、日本の電源別の発電割合は、天然ガス26.6%、石炭22.2%、石油10.2%、原子力31.2%、水力9.0%、地熱0.4%、新エネルギー0.4%であり、その大部分火力(天然ガス、石炭、石油)によるものです。(経済産業省、資源エネルギー庁、電源開発の概要等(2007年度)、より)

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日本の一次エネルギー国内供給(我が国のエネルギーバランス・フロー概要、2004年度、google画像)

(解説) 日本一次エネルギー(自然界から直接得られるエネルギー)の国内供給は、2004年(平成16年)については、上図のようになっています。今では、日本の一次エネルギー約4割発電用に用いられています。 

 その発電方式別の発電量をみると、水力がほぼ一定で、火力、次いで原子力発電が伸びてきています。火力発電の中でも、石油から石炭、天然ガスへの代替が進んでいます。2007年度の発電電力量割合水力7%、火力70%、原子力22%となっています。(EDMC/エネルギー・経済統計要覧(2009年度)、より)

 地球温暖化対策として、ここ数十年内に、火力を下げ、現在の再生可能な自然力(自然エネルギー)を、数%から20%まで引き上げようと、各国で検討されています。

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風力発電装置((阿那賀丸山、南あわじ市、兵庫、大鳴橋記念館展望台より、google画像)

(解説) 日本発電は、環境にとって問題のある化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど一次エネルギー)原子力によるものがほとんどを占めています。国内の原発は54基で、約30%をまかなっています。大規模な水力や地熱を除いた、太陽光や中小水力、風力、バイオマスなどの再生可能な自然エネルギーが占める割合は1%前後にすぎません。

 地球温暖化の政策として、2020年には、現在の再生可能な自然力自然エネルギー)を、数%から20%まで引き上げようと、世界各国で政策が立案されています。

 各自然エネルギーのポテンシャル(潜在量)などから、日本において実現可能と考えられる電力分野における「2020年・20%」の内訳を試算したものは、バイオマス発電0.6%、風力発電5.1%、太陽光発電2.0%、地熱発電1.0%、中小水力発電4.2%、大規模水力発電6.3%、黒液廃材発電0.8%、合計20.0%(総発電電力量は10259億kWh)となっています。

 また、再生可能な自然エネルギーを取り入れる各国政策目標は、2010年では、日本約1%、EU252.1%、ドイツ12.5%、フランス2.0%、スペイン2.9%、USA5.30%、中国1.0%(設備)となっています。

(参考資料) 経済産業省、資源エネルギー庁(ホームページ、東京):http://www.enecho.meti.go.jp/index.htm

淡路島(大鳴門橋記念館展望台、So-netブログ): http://hasio-wataruto.blog.so-net.ne.jp/2010-01-30

2010年4月 5日 (月)

原子力エネルギーと原子爆弾(マンハッタン計画)、原子爆弾投下(広島、長崎)、日本の原子力発電所(核燃料、原子炉)、天然原子炉(オクロ鉱山、南アフリカ)、とは(2010.4.5)

  1941年(昭和16年)12月8日~1945年(昭和20年)9月8日、太平洋戦争の時、アメリカ合衆国(USA)は、マンハッタン計画において、1945年(昭和20年)7月16日、アラモゴードの砂漠(ニューメキシコ州、USA)において、人類初のプルトニウムの原子力エネルギー(核エネルギー)を使った原子爆弾の実験(トリニティ実験)に成功しました

 原子爆弾(略称、原爆)は、ウラン235(質量数235のウラン)、プルトニウム239(質量数239のプルトニウム)などに核分裂反応を爆発的に行わせ、発生する熱線、衝撃波、各種放射線を利用した爆弾です。1945年(昭和20年)8月6日、午前8時15分、ウランを用いたものが広島に、プルトニウムを用いたものが、3日後の8月9日、午前11時2分、長崎に投下され、人類史上かってない大惨事をもたらしました。

原子爆弾のキノコ雲 広島原爆投下(1945.8.6)、 下 長崎原爆投下(1945.8.9)、google画像) 

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オットー ・ ハーンOtto Hahn1879~1968、ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%B3

(解説) 核燃料の核分裂反応は、ウラン、プルトニウムなどの重い原子核が、熱中性子(低エネルギー中性子)の照射によってほぼ同程度の大きさの2つの原子核に分裂する現象です。1938年(昭和13年)オットー・ハーンらが発見、この際、大きなエネルギーの放出を伴うことが分かりました。

 戦後、原子力エネルギーの平和利用として、原子炉による原子力発電が開発されました。これは、原子炉で発生する熱エネルギーを用いて、高温高圧の水蒸気をつくり、火力発電と同じように蒸気タービンを回して発電するものです。原子炉では、熱中性子を吸収し核分裂の度合いを調整する制御棒を操作し、濃縮ウランなどの原子核分裂の連鎖反応を制御しながら持続させる状態(臨界、りんかい)にしています。

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原子力発電所 原子力発電所の分布地図 下 美浜原子力発電所、google 画像)

 1969年(昭和44年)8月8日、関西電力の美浜原子力発電所(美浜町、福井)で生み出された電気が大阪万博会場(吹田市、大阪)に送られました。この試験的な送電は、出力1万キロワットと小さいものでしたが、日本のエネルギーに新時代の到来をもたらす記念日となりました。

 現在、日本の総発電量の約3割は、核燃料(ウラン、プルトニウムなど)を用いる原子力発電によるものです。地球の温暖化が、化石燃料(石炭、石油など)を用いる火力発電が大きな要因となっているということで、これを減少させる対策として、原子力発電が注目されたことがあります。

 原子力発電では、火力発電の化石燃料の燃焼によって二酸化炭素や硫黄酸化物などの地球環境に悪影響を与える排ガスは生じないのですが、核燃料の中に核分裂によって生じた有害な放射性物質が蓄積されます。ということで、使用済みの核燃料をいかに安全に長時間管理するかという問題を抱えています

 天然原子炉とは、過去に自然に核分裂反応が起こっていたウラン鉱床のことで、1972年(昭和47年)、Francis Perrin(物理学者、フランス)が発見しました。天然原子炉が発見された場所は、オクロ(オートオゴウェ、ガボン、南アフリカ)にある3つの鉱床で、自律的な核分裂反応のあった場所が16ヵ所も見つかっています。約20億年ほど前、数十万年にわたって、平均で100kW相当の出力の反応が起きていたという。

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天然原子炉の場所と外観オクロ鉱山、ガボン共和国、南アフリカ、google画像)

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黒田和夫 (P.K.Kuroda1917~2001、ウィキペディア): http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E7%94%B0%E5%92%8C%E5%A4%AB. 

 自然界で天然原子炉が形成される可能性は、1956年(昭和31年)、P. Kuroda(P、洗礼名のパウル、黒田和夫)が予言されていました。オクロで発見された条件は予想された条件に極めて近かったという。(Kuroda, P. K. (1956). “On the Nuclear Physical Stability of the Uranium Minerals”. Journal of Chemical Physics 25: 781–782; 1295–1296. )

○ 天然原子炉が20億年前のガボン共和国(アフリカ)のオクロ鉱山で稼働していた!

 その根拠は、自然界に存在するウランは、主に重さの違いから「ウラン235」と「ウラン238」の二種類があります。このうち臨界に達するのが235です。太陽系に存在する全てのウラン鉱石はほぼ238で構成され、235の比率はわずか0.72%です。このため自然界では通常、235の比率が低すぎて臨界には達しない。原子炉で用いるウラン燃料は、235の割合を人工的に2~5%にまで濃縮しています。

 地球化学者、黒田和夫博士(1917~2001)は、アメリカのアーカンソー大助教授時代の1956年(昭和31年)、天然ウランが自然界で臨界に達する「天然原子炉説」を発表しました。黒田博士が着目したのは、半減期の違いでした。ウラン235の半減期は約7億年とウラン238(約45億年)より短く、過去にさかのぼるほど鉱石中の比率が高くなります。約20億年前なら約3%となり、原子炉のウラン燃料中の濃度に近くなります。

 論文発表から16年後の1972年(昭和47年)、フランス原子力庁の調査で、オクロ・ウラン鉱床のウラン235の比率が0.44%まで減っていることが判明しました。そこからオクロでははるか昔に臨界に達していたことが導き出され、黒田説の正しさが証明されました。

 その後の研究で、オクロ天然原子炉は数十万年にわたって断続的に臨界に達していることが分かりました。ウラン鉱床に染み込んだ地下水は軽水炉と同様、核分裂を引き起こす中性子の減速材の役割を果たしていました。熱で水が蒸発すると反応が止まりますが、鉱床が冷えてまた地下水が流れ込むと再臨界に達することを繰り返しました。その間の総出力は百万キロワット級の原子炉5基を1年間フル稼働させたときに発する熱エネルギーに相当します。

北陸中日新聞: 20億年前のアフリカ 天然原子炉あった 日本人が存在主張 原発5基分の熱エネルギー、2013年(平成25年)11月4日(月)朝刊

 私が金沢大学理学部(城内キャンパス)に勤務していた頃、1973年(昭和48年)7月7日、天然原子炉を予言された黒田和夫教授(アーカンソー大学、USA)が日本化学会主催、北陸地区の講演会で来沢され、金沢大学工学部の秀峰会館(小立野、金沢)で「宇宙化学と私」という演題で講演されました。

 丁度、七夕の日と重なり、「カナダから メキシコかけて 天の川」の一句をご披露され、また、1956年(昭和31年)、約20億年前にはウラン鉱床で自然に核分裂が起こる「天然原子炉」があったという予想、その後、1972年(昭和47年)、南アフリカのオクロ鉱山で天然原子炉が発見された秘話など、懐かしく思い出されます。 

(参考文献) 下中邦彦編: 小百科事典、平凡社(1973); 新村出編: 広辞苑(第四版)、岩波書店(1991); 大木道則、大沢利昭、田中元治、千原秀昭編: 化学辞典、東京化学同人(1996): 太田次郎、山崎和夫編: ー物質とエネルギーの探求ー、高等学校、新編、理科総合A(改訂版)、啓林館(2005).

(参考資料) 原子爆弾(広島、長崎、google画像): http://images.google.co.jp/images?hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%88%86%E5%BC%BE&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi

原子力発電所(日本、google画像): http://images.google.co.jp/images?hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi

オクロの天然原子炉(南アフリカ、google画像): http://images.google.co.jp/images?hl=ja&rlz=1T4GGIH_jaJP278JP279&q=%E3%82%AA%E3%82%AF%E3%83%AD%20%E5%A4%A9%E7%84%B6%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi

(追加説明) ○ 原子爆弾は、原子核分裂の連鎖反応を利用し、狭い空間で瞬間的に大量の核分裂エネルギーを放出させる装置です。臨界量(連鎖反応に最低必要な量)以上の核分裂核分裂性物質10キログラムを使用、約1キログラムが核分裂し、TNT2万トン相当の威力を示しました。

○ 原爆と水爆

 1945年(昭和20年) 8月6日 B29が広島原子爆弾投下(死者約15万人)。9日 長崎に投下(死者約7万人)、のち「原爆ドーム」となる広島県物産陳列館を設計したのは、チェコの建築家、ヤン・レツル(1880~1925)であった。

 1946年(昭和21年) 7月1日 米国がビキニ環礁で大戦後初の原爆実験。

 1948年(昭和23年) 5月14日 イスラエル共和国建国宣言。5月15日 第1次中東戦争。

 1949年(昭和24年) 10月1日 中華人民共和国が成立。

 1952年(昭和27年) 2月26日 チャーチル英首相が英の原爆保有を公表。11月1日 米が太平洋のエニウェトク環礁で水爆実験。5月25日 米がネバダで原子砲実験。8月8日 マレンコフ・ソ連首相が水爆保有を公表。

 1954年(昭和29年) 3月1日 アメリカが太平洋ビキニ環礁で水爆実験。静岡県焼津の第5福竜丸が放射能被災。9月23日 無線長・久保山愛吉死亡。原水爆禁止署名が全国的規模で起きる。6月2日 ソ連で世界最初の原子力発電による送電が開始される。(5000キロワット)

 1955年(昭和30年) 2月17日 英が水爆開始を発表。3月16日 フランスが原爆製造開始を発表。8月6日 第1回原水爆禁止世界大会を広島で開催。

 1957年(昭和32年) 5月15日 英国がクリスマス島で初の水爆実験、第3の水爆保有国に。8月27日 茨城県東海村の原子力研究所で、米国型原子炉に「原子の火」ともる。9月19日 米国がネバダ州ラスベガスで初の原爆地下実験。

 1958年(昭和33年) 3月31日 ソ連が核実験の一方的中止を言明。8月22日 米英が条件つきで10月31日以降核実験の1年間停止を発表。9月30日 ソ連が核実験を再開。10月31日 核実験停止に関する米英ソ3国会議開催(~12月19日)。核実験停止交渉開始。

 1960年(昭和35年) 2月13日 フランスがサハラ砂漠で初の原爆実験。第4の核保有国に。

 1964年(昭和39年) 10月16日 中国が第1回原爆実験に成功。17日 日本政府が抗議の談話を発表。11月12日 米原潜シードランド号が佐世保に入港。18日 反対デモ、警官隊と衝突。14日 出港。 

戦後史年表 1926ー2006、朝日新聞社(2007)、より) 

○ 金沢大学 理学部化学教室 放射化学講座 開設のきっかけ

 1954年(昭和29年)3月、静岡県焼津港から全国の市場に発送された、太平洋ビキニ環礁での米国の水爆実験による被ばくマグロが6本、金沢の近江町市場でも入荷されました。その後、2本は金沢大学の研究に使われ、4本は野田山墓地の近くに埋められました。

 木羽敏泰教授(分析化学講座)らは、マグロのうろこを一枚ずつ塩酸に漬け、放射性物質を取り出す研究を不眠不休で取り組みました。この研究が認められ、1962年(昭和37年)、金沢大学に全国でもいち早く放射化学講座開設されることになりました。

近江町襲った「死の灰」恐怖、第五福竜丸事件から55年 被ばくマグロ 流通寸前(石川ニュース、北国新聞、2009.3.1):http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20090301101.htm. 

いわゆる「原爆マグロ」に付着せる放射性物質について(木羽、大橋、柴田、水辺、JAPAN ANALIST、1954、pdf): https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku1952/3/4/3_4_361/_pdf

○ 原子力発電は、原子炉で発生する熱を用いた発電です。天然ウラン黒鉛減速型、加圧水型、沸騰水型等の発電用原子炉の冷却材を熱交換器に導いて、できるだけ高温高圧の水蒸気を発生させ、これでタービン発電機を運転させます。つまり火力発電所のボイラを原子炉と熱交換器で置き換えたものに相当します。最初の原子力発電は、1954年(昭和29年)ソ連で成功(出力5000キロワット)、次いで英国で1956年(昭和31年)に発電(出力35000キロワット)を開始しました。

 日本では1957年(昭和32年)、9電力会社、電源開発会社、5原子力産業グループなどの出資で、日本原子力発電(株)を設立、原子力発電計画が発足しました。1960年(昭和35年)、東海発電所は、コールダーホール型原子炉により、日本最初の商業発電を開始、1967年(昭和42年)完成時の電気出力は166メガワットでした。敦賀発電所は、沸騰水型原子炉により、電気出力322メガワットで、1970年(昭和45年)に操業を開始しました。 東海発電所1967年日本初の商業用発電、1998年停止、23年間の解体、撤去工程予定):http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80. 

○ 原子炉は、核燃料、制御棒、冷却剤、減速剤、反射材、遮へい材という材料から構成されています。近年、話題となっている高速(中性子)増殖炉は、プルトニウム239を燃料として使い、ブランケット部(冷却、核燃料生産、遮へいを担う装置)に置いたウラン238をプルトニウム239に核変換させるので、プルトニウム239を消費して発電しながら、同時に新しくプルトニウム239を増殖できる可能性があります。

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